漫画×構造分析 『ONE PIECE』アラバスタ編を構造主義的に読み解く。4 ~31の機能分類 2~

●ビビと麦わらの一味との出会い

アラバスタ編は、コミックスでいうと
第17巻末から第23巻末までにあたる。
しかし、その主人公であるビビの初登場は
第12巻第103話のラブーン編だ。
ビビが麦わらの一味と出会うまでのあらすじを
簡単に紹介しておこう。

・ラブーン編(双子岬)
  アイランドクジラのラブーンを狙う
  謎の男女Mr.9とミス・ウェンズデー。
  紆余曲折ありながらも、ルフィは彼らを
  ウイスキーピークという町へ送ることにする。
・ウイスキーピーク編
  歓迎の町ウイスキーピークは、
  実はバロックワークスが牛耳る賞金稼ぎの巣だった。
  ゾロの活躍によって麦わらの一味は難を逃れるも、
  ミス・ウェンズデーが実はアラバスタ王国の王女
  ネフェルタリ・ビビであることが暴かれる。
  ルフィたちはビビをアラバスタ王国へ送ることに。

●モブキャラから王女へ
  ――機能29「姿の変更」

正体を隠し潜入していたビビが、王女という真の姿に戻る。
この過程は、機能その21「迫害・追跡」からの機能その22「救い」、
そして機能その29「姿の変更(変身)」という流れを
先取りしたものと考えてよいかもしれない。

★機能21.迫害・追跡:主人公は迫害や追跡をうける
★機能22.救い:主人公は追跡者から救われる
★機能29.姿の変更:主人公に新たな姿が与えられる

バロックワークスに潜入したビビは、
ミス・オールサンデーを尾行することで
Mr.0ことクロコダイルの正体を突き止めた。
しかしその代償として、自らの身分もばれてしまう。
その結果、Mr.5とミス・バレンタインが、
ビビを抹殺しにやってくる(第13巻第110話)=迫害・追跡
バロックワークスは力量によって序列がはっきりしている。
そこでビビを助けるのが、麦わらの一味なのだ。=救い

初登場時は「ミス・ウェンズデー」と名乗っており、
キャラクター描写としてもいわばモブ顔だった彼女が、
第110話を境に王女ネフェルタリ・ビビへと変身する。=姿の変更
なんと、髪型が変わっただけでなく、顔つきも少し可愛くなるのだ。
この展開の見事さに読者は驚いたことだろう。
同時に、示された王国と陰謀に、大いに期待したはずだ。

ところで。
前回の記事では機能11「出発」までしか述べていないのに、
機能21まですっ飛んでしまっている。
というのも、31の機能をすべて順序通りに配置する必要はないのだ。
というか、すべての物語が順序通りだとしたら、
通り一辺倒でワンパターンな物語しか生みだせなくなってしまう。
『ONE PIECE』アラバスタ編では、機能29「変身」
物語の最初にもってくるという独自の仕掛けによって、
ラブーン編~ウイスキーピーク編~アラバスタへ……という
エピソード間のつながりをスムーズにしているのではないだろうか。
「モブキャラだと思っていたのに、超重要人物だった!」
という驚きは、読者をますます惹きつける強力な仕掛けだったのだ。

惜しむらくは、そういった細かな仕掛けの積み重ねが、
最近の『ONE PIECE』には少ないことだ。
例えば、ドレスローザ編。
国の乗っ取り、身分を偽る王女、だまされる民衆……
全体の構図としては、ドレスローザ編はアラバスタ編と似ていると思う。
しかし、プルトンを狙ってアラバスタを襲ったクロコダイルに対し、
ドフラミンゴがドレスローザの国王についたのは
もともとドンキホーテ一族の国だったからという理由。
ドレスローザ編ではヴィオラとレベッカという二人の王女が登場するが、
両者ともビビほどの活躍はなく、エピソードの主人公としては弱い印象。
読者を驚かせる展開や物語を面白くする仕掛けが少なく、
比べるとどうしてもアラバスタ編の方が
より物語に厚みがあるような気がしてしまうのだ。

とはいえ、ドレスローザ編にはキュロスとレベッカの父娘愛や、ローとドフラミンゴの長年の確執などの
他のエピソードにはない「機能」がある。
そのあたりについても、いずれ詳しく分析したいと思う。

●機能23~28の補足

ここからは補足だが、機能22から機能29まで飛んでいるのは、
間に挟まる機能23~28が魔法昔話に特有の展開だからだ。
プロップによると、多くの魔法昔話においては
主人公が「変身」するまでに以下の過程を踏むとされる。

★機能23.気付かれない到着:主人公は、気付かれずに家または他国に到着する
★機能24.根拠のないみせかけ:偽の主人公が、根拠のないみせかけをする
★機能25.難題:主人公に難題を課す
★機能26.解決:難題が解かれる
★機能27.判別:主人公が気付かれる
★機能28.暴露:偽の主人公や敵、加害者が暴露される

プロップが分析したロシアの魔法民話では、
いったん物事が解決した後に、
主人公が再び災難に巻き込まれるというパターンが多い。
敵対者をこらしめてもすぐハッピーエンドにはならず、
主人公は迫害され追跡されてしまうのだ。
そこを救われ、ひそかに故郷(あるいは他国)へと到着する。
偽の主人公が登場し、主人公の功績を横取りしようと目論む。
真偽を明らかにするために難題が課されるが、
主人公が見事その難題を解決し、真の英雄が判別される。
偽の主人公(あるいは敵対者)が暴かれ、
主人公が真の姿(または新しい姿)へと変身する。というわけだ。

過去の記事では偽の主人公は「海軍」であるとしたが、
それは主人公がビビからルフィに交代した後、
海賊ルフィの功績をなすりつけられる存在としての役割だ。
ここで述べた機能23~28のような行動は起こりえない。
なぜなら、ルフィたちはあくまで海賊であり、
功績や名誉のために奮闘してきたわけではないため、
それらを取り戻すために行動することなどありえないからだ。
ついでに言うと、最初の主人公であるビビにとっても、
対になる偽主人公は存在しない。
機能23~28がなかった理由がお分かりいただけただろうか。

~31の機能分類 3へつづく~

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