漫画×構造分析 『ONE PIECE』アラバスタ編を構造主義的に読み解く。6 ~31の機能分類 4~

●レインベース~決戦の地アルバーナ

・レインベース
一行は反乱軍を止めるためにカトレアを目指しかけたが、
「クロコダイルをぶっとばしたい」というルフィの言葉により、
敵の本拠地であるレインベースへと目的地を変更する。
クロコダイルのいるカジノへと乗り込んだルフィたちだが、
まんまとつかまり檻に閉じ込められてしまう。
・砂漠にて
サンジの機転によって危機を逃れた一味は、
ヒッコシクラブのハサミにのってアルバーナを目指す。
ルフィはクロコダイルと一騎打ちに臨むが、敗北してしまう。
・アルバーナ
結局反乱は始まってしまうが、ビビは諦めず宮殿を目指す。
彼女を消そうとするオフィサーエージェントたちと、
麦わらの一味が各地で戦いを繰り広げる。
宮殿ではクロコダイルがコブラ王を追及しており、
護衛部隊やコーザにもその企みが知れ渡るが誰も勝てない。
しかも、クロコダイルは広場を爆発する爆弾を仕掛けたという。
絶望の中、宮殿から突き落とされたビビを救ったのは、
戻ってきたルフィだった。
ルフィはクロコダイルに二度目の一騎打ちを挑むが、
再び敗れてしまう。
・時計台/葬祭殿
ビビや仲間たちは、爆弾を止めるために時計台へ。
そしてルフィは、クロコダイルを負って葬祭殿へ。
ペルが命を賭して時限式の爆弾から町を救い、
ルフィは三度目にしてようやくクロコダイルを打ち破る。
しかし、反乱は収まらずビビは悲痛な叫びをあげる。
その時奇跡的に雨が降り、反乱はようやく終わるのだった。

●三度の戦い
――機能16「戦い」と機能18「敵の勝利」

魔法昔話では、主人公は敵対者に戦いを挑むが、
加害による欠如を回復するまでに(少なからず一度は)
敵が勝利するというのがパターンのようだ。

★機能16.戦い:主人公とその敵が直接に戦いに入る
★機能18.敵の勝利:敵が勝つ

アラバスタ編の第一の主人公はビビだ。
ビビはクロコダイルに2度敗北している。
1度目はレインベースのカジノの地下、水槽に囲まれた檻にて。
国を蹂躙された怒りをぶつけるが、まったく相手にされなかった。
2度目はアルバーナの宮殿にて。
コブラ王やコーザの前でクロコダイルの悪事を暴くが、
反乱軍を止められず爆弾の設置も突き付けられ、絶望する。
ビビは宮殿の上から落とされるが、それをルフィが助けに来る。
この瞬間、主人公の交代が成立したと考えてよいだろう。

第二の主人公であるルフィは、クロコダイルと3度も直接対決している。
1度目はレインベース出発直後。
スナスナの実の能力を前にあっけなく敗北してしまう。
ただし、前記事で紹介した機能14「調達」で手に入れた
キーアイテム=「水」の効果がここで描かれている。
この戦いでの気付きなくして、ルフィの勝利は成しえないのだ。
2度目の対決は、アルバーナの宮殿にて。
ビビの悲痛な叫びを聞いて駆け付けたルフィはまさにヒーローだ。
ルフィは水をタル一杯用意し、さらに「水ルフィ」という戦略を使うが、
それでもクロコダイルにはかなわず敗北してしまう。
最後の対決は、葬祭殿にて。
キーアイテムは、滴り落ちる自らの血へと変化する。
自らの命を懸けてクロコダイルを倒そうとする、手に汗握る展開だ。

度重なる敗北を乗り越えて、とうとうルフィが勝利する。
アラバスタ編以前だと、複数回ルフィを叩きのめした敵はいなかった。
(アーロンも強敵だったが、ルフィはダウンしたというよりも  海に沈められて行動不能にさせられたくらいだった)
勝利を経て、機能8「敵対行為」によって欠如していた状態が回復する……はずだった。
欠如の回復のためには、もうひとつの要素が必要だったのだ。

●降るべくして降った雨
――機能19「不幸または欠落の除去」機能20「帰還」

過去の記事で、欠如は物語を動かす動機になると書いた。
アラバスタ編は、国を失ったビビが取り戻そうとする物語だ。
結末を彩る2つの機能について考えてみよう。

★機能19.不幸または欠落の除去:初めの不幸または欠落がとりのぞかれる
★機能20.帰還:主人公は帰還する

ルフィがクロコダイルを倒したことで、
不幸または欠落の除去(=欠如が回復)、つまり国が取り戻せるはずだった
ところが、クロコダイルが倒れた後も反乱は止まらなかった
ビビが愛した平和なアラバスタとは程遠いままだ。
その理由にこそ、構造分析的解釈の意味がある。

止まらなかった反乱を止めたのは……そう、降り注いだ「雨」。
ビビの悲痛な叫びも相まって、非常に印象的なシーンだ。
雨によって初めて、民衆も時計台にビビがいることに気づく。
2年前に国を飛び出して以来ずっと不在だった王女が、
「帰還」した瞬間でもある。

この「雨」は、自然に降ったものだ。
第23巻第212話の冒頭では、スモーカー大佐が
ダンスパウダーの使用について明確に否定している。
海軍の中でも仁義と正義感のある彼のことだから、嘘ではないだろう。
つまり、あのタイミングで偶然にも、雨が自然に降ったということだ。
演出としては、「戦いを…!!!! やめて下さい!!!!」(第23巻第210話)
というビビの悲痛な叫びが、雨を呼んだように描かれている。
しかし、物語を構造的に見るならば、
クロコダイルが敗れたこと(=機能19)、そして雨が降ったこと、
その結果として欠如が回復(=国の完全な奪還)が叶ったといえる。
欠如の回復のためには、雨が必要不可欠だったと考えれば、
構造分析的には、あれは降るべくして降った雨だったといえるだろう。

●海賊か王女か――機能31「即位」

魔法昔話において、主人公は王女と結婚し王位を継承する。
王女が登場しないパターンでは結婚だけ、あるいは即位だけの場合もある。
いずれにしろ、典型的なハッピーエンドの形だ。
それでは、アラバスタ編の結末はどう解釈できるだろうか。

★機能31.結婚もしくは即位:主人公は結婚し、即位する

最終的に、ビビは海賊の仲間としてまだ見ぬ冒険に出ることよりも、
アラバスタ王国の王女として国の復興に尽力することを選ぶ。
主人公が女性(というか王女)だからこそ、
「結婚」ではなく「即位」のみのパターンなのだろう。

過去の記事では、「使命」をもっているキャラクターをルフィが助け、
「使命」を果たしたとき、仲間入りするというのが
『ONE PIECE』の鉄板パターンだと書いた。
ウソップやナミは、故郷の村を守るという使命。
サンジやチョッパーは並みならぬ恩がある人を守るという使命。
(ゾロは少女を助けた代わりに一か月磔にされていただけだが、
それも「約束」を大事にするゾロらしい使命といえなくもない)
みんな「使命」を果たした後に仲間入りしたが、
ビビだけは異なる選択をした。
仲間入り=冒険の継続ではなく、
即位=物語への終止符を選んだともいえる。

ビビの選択は、『ONE PIECE』的鉄板パターンからすれば
究極の「外し」だ。
しかし、実は構造分析的には王道の結末だったのだ。
もっといえば、拳を振り上げるあの別れの名シーンも、
構造分析的にみれば機能17「照準」をうまく利用しているから成功したといえる。

一連の記事で、執筆者・kurageがアラバスタ編の考察に
構造主義を持ち込みたかった理由がお分かりいただけただろうか。
機会があれば、その他のエピソードや『ONE PIECE』以外の漫画でも
構造主義に基づく分析を試みてみたい。

~31の機能分類 終~

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