『暗殺教室』に学ぶ、教育・子育て論!
現役塾講師の視点で解説します(全5回)
第1回は“野球の時間”(単行本第1巻収録)からです。
話のメインの人物は“杉野友人”です。
野球部のレギュラーから降ろされて、勉強もやる気をなくし、E組に落とされた杉野。彼は尊敬する日本人メジャーリーガーの投球フォームを真似て、殺せんせーを倒せるBB弾を仕込んだ球を投げました。それを殺せんせーに見抜かれて、彼にこうアドバイスします。
「彼(日本人メジャーリーガー)に比べて君は肩の筋肉の配列が悪いので、豪速球は投げられない。一方で、肘や手首の柔らかさは君のほうが素晴らしい」
さらに「才能の種類はひとつじゃない」とも付け加えました。
この話からは
「真似が必ずしも正解とは限らない」
「一つの視点で子どもを見る危うさ」
が学べます。
偉い先生がそう言ったから…。上の子はこうやって言ってできたから…。
上手くいった人や出来事をふまえて実践に移すことは良くあることです。
しかし、同時に「成功の囚人」という言葉も知ってほしいです。
「成功の囚人」とは、ビジネスで過去の成功に囚われて、新しいことに挑戦せず、結果変化に対応できず凋落してしまうことを指します。成功者の真似が必ず成功にはつながりません。成功者の環境や状況との差が違い過ぎたり、成功の理論が賞味期限切れだったりするかもしれないからです。
もう一つ「一つの視点で子どもを見る危うさ」についてです。
作中で杉野は「俺の球は遅い」と気にしています。親も子も塾の先生も、苦手な所や弱い所をどうしても見てしまいます。
ただ、苦手なことや辛いことを続けるのは、大人でも大変ですね。よって、気になるその一点ではなく、別の視点に目を向けましょう。「短所を克服する」ことよりも「長所を伸ばす」ことをまずやるのです。
実はその結果、いずれ短所も修正できます。
野球の話なので、野球の例えを使います。
元ヤクルトスワローズの宮本慎也氏のエピソードです。
彼はプロでスター選手のバッティングを見て「自分はこのようにバンバンホームランを打って活躍できない」と思ったそうです。そこで自分の持ち味である守備に磨きをかけました。
結果、球界屈指の守備の名手となり、さらにバッティングも向上。“2000本安打”という超一流の選手が成せる偉業も達成しました。
得意なことを極めたことで、他の力も伸びたという一例です。
一つの視点だけを見ているうちは可能性を広げられません。
そこからさらに別の一面を見つけることが、スタートラインです。
いかがでしたでしょうか。
次回は“片岡メグ”でお話しします。
(そのかわ ゆうじ)