パァパと呼ばれる青年が、原始時代のような場所で赤子を育てるシーンから始まるこの漫画は、ところどころに柴田亜美作品の鱗片がでてくる。様々な種族の人々が暮らす世界をそれぞれの立場から守ろうとする話。各部族からはみ出してしまったものや、王の血筋をひくもの、仲たがいにしている種族や一緒に暮らす種族など種族同士の位置関係も細かに描かれている。中でも注目すべきはHEROの兄弟で長い時を弟の成長を見守ることに費やし、また命を賭して弟を守ろうとする兄弟愛、シーン一つ一つが強い思い入れをもって書描いたことが伝わってくるので涙なしには見れない作品となっている。パァパとHEROの関係や、兄弟の絆、友人として、戦友として、HEROへの信頼や愛情の濃さがひしひしと伝わってくる。単行本ではところどころに作者のリテイク画像が乗っているので、実際に作中に使われた原画と没になった原画の違いも楽しむことができる。割合でいうとギャグ３、シリアス３、家族愛４の構成はシリアスになりすぎず、何度読み返しても泣ける柴田亜美ならではの黄金比といっても過言ではない。また、他作品との絡みもあるのでぜひそれを考慮したうえで併せて他作品も読みたくなること間違いなしの作品です。