ほんのわずかな救い 【レビュー】 金田一少年の事件簿R 雪鬼伝説殺人事件

犯人の動機

先週でほとんど明らかになった犯人の動機ですが今週は更に深堀していきます。
金田一少年の事件簿では「復讐」のための犯人が多く、そのため被害者よりも犯人により感情移入できる場合が多く感じます。
しかも事件当初の何件かの殺人で犯人は復讐の1部、あるいは全部を成し遂げています。

1部しか成し遂げていない場合は犯行が明るみになった時点で強引に復讐を成し遂げようとします。
全部成し遂げた場合は満足して自殺に及ぶ場合が多いです。

これはほとんど様式美のようになっています。一度ラストシーンでの犯人の行動パターンの統計を取ってみたいところです。

ほんのわずかな救い

結局犯人は大事な人を奪われ自分は殺人犯になってしまい実の所最悪の結末を迎えました。
ただ、たった一つ、実は恋人の死は事故であったと知ります。
追い詰められた末の自殺と思い込んでいた犯人にとっては救いになりました。
彼女が亡くなったという事実は一切変わりませんが、想像していた彼女の心と現実は違ったのです。

自殺ではなかったけど恨みを残して死んだかもしれない

しかし自殺で無かったとしても死の間際に自分を貶めた人たちに対する復讐の念を抱いていたかもしれません。
結局のところ復讐を目的とした殺人事件であり、その復讐に対して納得感ある理由がある以上、被害者が一人も出なくても後味の悪い切ない結末にしかならないわけです。
実の所わたしは、そういう切なさが金田一少年の事件簿の魅力だと感じています。
トリックを解読するまで頭脳を使ったら、そのあとは物語で心を使うのです。
この作品は頭脳も心も使わせる贅沢な作品であると思います。

-週刊少年マガジン 2014年14号 金田一少年の事件簿R-