ドSの貧乏神の性悪さが圧倒的。 【レビュー】 カミドリ 作者:池沢春人 読み切り 週刊少年ジャンプ 2014年24号

五エ門と八百万の神々

舞台は、石川五右衛門が活躍したであろう安土桃山時代あたりに見えます。主人公はイケメンの花形五エ門。石川五右衛門を完全に意識した人物ですが、見た目は全く新しい五右衛門像といえる超イケメン。この作者の絵は女性作家のような繊細さがあり、それが時代物と妙にあっていて、なんともいえない魅力があります。

大泥棒と神々

日本には、たくさんの神がいます。今までも様々な作品で題材にされて来ました。この作品も、そういったものですね。神さまウンチクもありながら、あまり知らないような神が出てきたり。神を出すということは、例えば、天照大神や、阿修羅明王なども、のちに登場する可能性があるということですから、好きな人には、ワクワク感がありますね。初期の孔雀王のような感じです。

毘沙門天とか期待しちゃうよな

時代背景は戦国時代が終わって間もない設定でしょうから、上杉謙信の毘沙門天とか期待しちゃいますよね。これは連載になってほしい。

主人公につきまとう貧乏神が面白い

貧乏神は、人間の不幸が好物で、それを探しているというものです。しかも不幸に遭遇している人間の心理状況が調味料となるらしく、主人公の「強がり」や「あまのじゃく」「負けず嫌い」などを楽しみます。苦境に落ちたときの人間の、最後の抵抗としての「心の動き」まで楽しむ性悪さ、「ドS」加減に、この作者はちょっとモノの見方が普通の人とは違うなと感じました。普通の人と違うということは、今までにあまり見たことない面白い切り口だということです。この貧乏神の性悪さは、相当に魅力があります。

普通なら、この貧乏神は美少女にする

貧乏神は、なんか猫とも、うさぎとも言えそうな、ファンシーな見た目の、マスコット的な外見なのですが、これは、安易にウケを狙うなら美少女キャラクターにすると思うんですね。物語にもヒロイン不在だったし。不幸を食う瞬間とか、食戟のソーマばりのサービスシーンを演出できると思うのですが、そこをやらないところが潔いというか、愚直というか、そこの感性も、一味違っていてよかったですね。まあ、物語の展開的に、ちょっと女の子のイメージではなかったですが。