自分を加害者と認めない一番厚かましい加害者川井さんは、自分の心の声を無視できない。 【感想】 聲の形 第39話

全員がどうしようもないってときあるよな

今回の将也の態度はよかったと思います。反省ってのは、反省してるように見せることではないので、別に川井さんにも真柴くんにも理解してもらう必要はありません。ただ一人硝子にだけ伝われば。
で、もう彼女には将也の後悔とか反省とか伝わっていて許しているわけです。好意に変わってしまっているくらいですから、正直二人の関係に他人がクビを突っ込むようなことじゃないですね。

将也と硝子の間で問題が解決しても

イジメていたのは、将也だけじゃなくて、植野も一緒ですね。彼女と硝子のあいだの問題は解決していません。彼女は多少の反省は持っているように感じますが将也ほどのものはないし、なんていうか、どういう心境なんでしょうか。興味深いです。ただ、硝子から手紙をもらったりしているので、彼女と硝子の関係も一段落している感じもありますね。

川井さんと硝子の関係

実は、これは非常に難しい関係です。川井さんの認識としては自分は加害者ではないということです。とはいえ、イジメられている硝子を見て止めもしなければ、笑っていたわけです。参加してないとは言い切れないですね。しかし彼女の認識は加害者ではありません。だから、彼女と硝子の関係は改善されることはありません。硝子は気にしてないようです。では、どこが改善されないのか。川井さんの心のなかで、小学生のときの自分と硝子の関係が改善されません。

川井さんはどこまで自分を騙せるか

自分は加害者じゃないと完全に思い込めれば川井さんは硝子にたいして後ろめたさもないでしょう。硝子が気にしてない以上、人間関係はうまくいくと思います。
しかし、人間、そんなにうまくいきません。
彼女は心の奥底で自分も加害者だったと微かに思っているでしょう。本来だったら自分はもっとイジメがなくなるようなアクションをすべきだった。できたはずだ、そういう思いが残っているような気がします。
真柴くんのような行動力のある人間がそばにいると自分が行動しなかったことを責められているような感覚もあるはずです。本当は自分も出来たんだよと。川井さんにとって真柴くんは見ていると心が泡立つような存在だということです。気づきたくない自分の本心を掴んで引っ張りだすような存在です。その彼に惹かれてしまうというのが、人間の難しさで、深層心理(無自覚な)にあるイジメを認めて謝りたいという気持ちが川井さんが真柴くんに惹かれる理由かもしれません。

自分を加害者と認めない一番厚かましい加害者

植野が今回、川井さんに対して文句があったのは、同じ加害者なのに人を悪く言うところです。「おまえが言うな」そういう気持ちでしょう。「自分だけは罪がないつもりか」そういう気持ちです。
で、これは将也が抱いている気持ちとも一緒です。ただ、加害者である植野も将也も、それを主張する立場にありません。それをわかっているから、川井さんは遠慮なく二人を攻めるわけです。

真柴くんを、どう捉えていいかわからない

正義感が強いのは彼のいいところだと思います。しかし、それに対する行動はバランスが悪いです。結局は自分の苛立ちを人にぶつけているだけに見えますね。今回は完全にそうでした。誰かを救うための行動ではないです。ただの自分の欲求からの行動です。これは、彼自身にそうとうな過去があるようです。それが、彼を駆り立てるのでしょう。彼の暴力性は少し気になるところです。DVなどの背景があるかもしれません。

長束くんは普通にいいヤツ

今回、一番の人格者は長束くんでしたね。彼はイジメ問題にクビを突っ込みすぎることなく、今の人間関係をありのまま見て行動しているようです。真柴くんのように入り込んでないので、みんなのわだかまりを解けるのは長束くんでしょう。ファシリテーターとして間をとりもってほしいですね。映画作りからわかるように企画力もありますから、これからの物語のキーマンになるはずです。

植野の美しさ

この作品の魅力に登場人物の美しさがあります。いろいろ込み入った難しい話は置いておいて、とにかく硝子が可愛くて美しくて好きだというファンが多いようです。
今回は、硝子以上に、植野が魅力的でした。
先週からですが彼女の作画が気合入ってます。やっぱり顔にバツが付いているんですけど隠れている部分が想像させる余地を残していて、なんとも言えない魅力があります。特に彼女が涙を流しているシーンはすごかったです。頬をつたう涙がバツで隠されてしまって見えず、手の甲と瞳に溜まった涙が妙に印象的です。このバツの入れ方は計算し尽くされてます。おもしろい表現を考えたものですね。