「君の名は。」には数々の名シーンがありますね。手のひらに書かれた「すきだ」を見て、駆け出す三葉。神社に続く階段で再会する二人…涙なくして語れないシーンです。
この記事ではそんな「涙」に注目してみます。瀧と三葉は別に泣き虫なわけではありません。故に二人が涙を流す場面は印象に残ります。そういったシーンから「涙」について考えていきます。
◆「涙」のシーン◆
では、劇中で瀧と三葉が涙を流したシーンを振り返ります。
①入れ替わった瀧が、口噛み酒を奉納した後、目覚めた時(瀧)
②瀧と奥寺先輩のデートについて思いを巡らしている時(三葉)
③瀧が口噛み酒を飲んで再び三葉と入れ替われた時(瀧)
④カタワレ時の山頂で、瀧と出会えた時(三葉)
⑤三葉との出会いの後、瀧が三葉の名前を思い出せない時(瀧)
⑥テッシーと共に町民に避難を呼び掛けている時(三葉)
⑦手のひらに書かれていた「すきだ」の文字を見た時(三葉)
⑧長い階段で二人が言葉を交わした時(瀧・三葉)
◆三種類の涙◆
涙には三種類の涙があります。「嬉しい涙」「苦しい涙」「無意識の涙」です。
先述したシーンはそれぞれ
「嬉しい涙」…③④⑦⑧
「苦しい涙」…⑤⑥
「無意識の涙」…①②
に分類できます。
そして、この三種類の涙の内、「嬉しい涙」と「無意識の涙」は目尻から、「苦しい涙」は目頭から流れやすいです。
理由としては、嬉しい涙や無意識の涙を流す時は、顔は正面を向いているか上を向いているかです。よって涙はより低い位置にある目尻に向かいます。一方、苦しい涙は、眉間にしわが寄っていたり、うつむいていたりすることから、涙が目頭に向かいます。
もちろん例外もあります。③は嬉しすぎて表情がぐちゃぐちゃになっているので目頭からも涙が溢れています。ただ、⑤や⑧の涙の流れ方はとても自然です。悲しい時や嬉しい時の涙はこうなるということをわかって描いてあると思いました。アマチュアの絵師の中には、目と同じ大きさの涙を書くような人もいます。一つの表現の形かもしれませんが、新海誠作品は「リアリティ」が一つの特長なので、こうした細かいところの配慮も、丁寧な仕事ぶりが見て取れました。