もろ個人的な独断と偏見で歴史まんが、おすすめベスト10を作ってみました。 2013年度版

漫画と歴史は非常に相性の良い組み合わせです。

例えば服装や町並みは文字で書いただけでは伝わり難いのですが、絵であれば一目瞭然です。

もちろんドラマや映画でもいいのですが、多くの人物が複雑に入り組むことが多い歴史作品の性質上、いつでも中断して読み直せるという漫画があっています。

そこで、歴史まんがの中でも傑作といえる10作品をランキングしてみました。
もちろん好みがあるので一概には言えませんが、どれも名作といえる作品を集めました。では早速ランキングです。

第10位 シグルイ 漫画 山口貴由 原作 南條範夫

南條範夫の小説『駿河城御前試合』の一話目である無明逆流れを中心に展開されている。小説では数十ページ程度の短い話だが、漫画は単行本全15巻にて丁寧に描かれている。小説一話目以外の要素も途中で出てくるため、果たしてどれほどの長編になるのかと心配したが、あくまでも小説一話目、無明逆流れを中心に完結した。チャンバラの描き方が独創的で何度も読み返してしまう。このまんがを歴史まんがというには異論があるかもしれないが、舞台設定はしっかりとしている。時代漫画というべきかもしれない。

第9位 センゴク 宮下英樹

歴史上の大きな流れを踏まえつつ独自の解釈を加えて新しい戦国時代を作り出している。主人公である仙石権兵衛秀久は、従来の歴史ファンなら主人公にはしない様な華の無い人物だが、うまく料理して一味違う戦国モノを作り出している。登場人物を見る視点を変える事で味を変えるというのは当作品全体に流れる手法で、明智光秀、豊臣秀吉、今川義元、武田勝頼など、ことごとく一般的なイメージと違う。そういう意味での変化が理解できる「通」好みの作品ともいえる。

第8位 バガボンド 井上雄彦

この作品を歴史まんがと言っていいのかどうか。10位に入った「シグルイ」もだが歴史という大局に関わらなかったが、注目すべき人生を生きた人物を描くという性質の作品。作者の井上雄彦は「スラムダンク」で描いたバスケット同様にチャンバラをリアルに描いている。同時に宮本武蔵の内面にも脚光を当てている。父親との関係からか意外と内向的な宮本武蔵の描き方は新鮮だ。

第7位 大奥 よしながふみ

男女逆転の江戸時代という、突拍子も無い設定だが、内容は大真面目だ。男女逆転にしても理由もなく入れ替わったのではなく男だけが死ぬ疫病で男の数が減り男女が逆転しないと社会が成立たなくなったという必然性が設定されている。大真面目に馬鹿げた設定に取り組んでいる作品で、その考え方は作品の細部に及んでいる。立場は逆転しても男と女の感性の違いは残っていたりする。そういったチグハグが生み出す切なさが作品全体の魅力にもなっている。

第6位 おーい!竜馬 小山ゆう 原作 武田鉄也

 あずみの小山ゆうと金八先生の武田鉄也が描く坂本龍馬まんが。高杉晋作と坂本龍馬が一緒に上海に行ってしまうような史実にない展開もあるが、分かりやすさと面白さをうまく作り出している。龍馬が題材だと大政奉還のあたりでの龍馬の活動が絵的には地味になりやすいのだが、そこまでしっかりと描き切れているのもよい。

第5位 へうげもの 山田芳裕

 文化という観点から戦国時代を描くことにより独特な世界観を作り出すことに成功している。信長の死など、いくつか史実と異なる独特な解釈や展開があり、それがまたワクワク感を出している。やりすぎればファンタジーになってしまうところを絶妙なバランス感覚でまとめている。読後にワビだのスキだのと読者がかぶれてしまうのも独特で、ギャラリーフェイクの読後感に近い。美術漫画だからだろうか。

第4位 雪の峠・剣の舞 岩明均

 歴史まんがの醍醐味の一つとして、昔こんなドラマチックな事がありました。そしてそれが現代のこれになりました。みんなが当たり前だと思っている物も人間の繋がりで生まれました。それでビックリ!という仕掛けがある。物事の発祥を巡るまんがということで、仮に発祥まんがとでも呼ぼうか。「雪の峠・剣の舞」は、まさに発祥まんがの傑作といえる。雪の峠と剣の舞という2作が一冊の単行本に収録されているのだが、特に雪の峠は発祥まんがの王道であり最高傑作。

第3位 赤龍王 本宮ひろし

 始皇帝から項羽、劉邦へと移り変わる中華の覇権を描いた傑作。自力で勢力を拡大していく項羽と仲間との協力で成長していく劉邦が最終的に天下をかけて戦う。商業的な理由からか終盤が駆け足になってしまったのが残念。少しだけ入ったフィクションも効果的で物語をうまく盛り上げている。項羽と劉邦を扱った作品の中ではまんがの枠を越えて最高傑作。

第2位 風雲児たち みなもと太郎

 幕末編も含めてどちらも面白い。作者の歴史に対する深い知識と、それを分かりやすく、ざっくりと伝える技術が非常に相性がよく複雑になりがちな時代背景や人物相関関係を鮮やかに浮かび上がらせている。歴史の面白さを最大限に引き出している。最早職人芸の域だ。出来れば昭和史までやって欲しい。

第1位 蒼天航路 王欣太

 横山光輝によってまんが版三国志は完成してしまった。しかしこの作品で三国志が蘇った。三国志正史と三国志演義のギャップを使い新鮮な三国志を生み出すことに成功。そしてこっちのが史実なんだよという説得力。たいていマニアックな三国志ファンは三国志正史をもとに演義は作り話だからと言って見下す。蒼天航路は単純にまんがとして面白く、従来の三国志演義ファンには新鮮さを与え、マニアックな三国志ファンには共感を得た。新しい登場人物が、どのように描かれるのか。それが、これほど楽しみだった歴史まんがは他にない。

さて歴史まんがランキングいかがでしたか?

それぞれ面白い漫画を集めたつもりです。ちなみに完結している作品も、継続している作品も取り混ぜておりますので、このランキングはあくまで2013年度版となります。バガボンドとシグルイを歴史まんがに入れていいのか悩みました。これらの作品を入れると「バジリスク せがわまさき」「ヴィンランド・サガ 幸村誠」なども歴史まんがに入るのかもしれません。結論が分かっている歴史漫画だからこそ、作者の力量が問われる歴史まんが。ランキングの中に知らない歴史まんががありましたら是非一読される事をお勧めいたします。