「君の名は。」徹底考察!⑤~「君の名は。」は新海誠BEST~

2016年夏に上映されたアニメ映画「君の名は。」。

評判が良く、2018年1月に地上波でも放送され、今なお多くの人に愛されている作品です。

その「君の名は。」を様々な視点で考察したり、マニアックな小ネタを紹介したりしていきます。

今回は、「君の名は。」以外の新海作品を視聴済みの方向けの記事です。「君の名は。」以前からの新海作品ファンは、「君の名は。」のハッピーエンドっぷりに驚いたそうです。「好きな作品だけど、ちょっと違うかなぁ」という声もあります。ただ、私の感想は違います。「君の名は。」は「新海誠BEST」で、これまでの集大成的作品だと思います。これまでの作品をふまえて、その理由を述べていきます。

【ほしのこえ】

 新海誠の名が世に出て、著名なアニメーターが衝撃を受けたとされる作品です。この時点から、離れ離れになった男女の切なさ、風景描写のこだわり等、新海作品の「核」となるものが顕在しています。「原点にして頂点」と評するファンが多いのも頷けます。無論、「君の名は。」にもこれらの手法が使われています。

【雲のむこう、約束の場所】

 「新海作品の分水嶺」だと私はこの作品をとらえています。「ほしのこえ」の核をより昇華させたものになっています。特に、浩紀の、佐由里のバイオリンを聞いて、自分も弾けるようにしたり、決心したら北海道まで行ったりと、正解かどうか分からずとももがく、動くといった様子は瀧とかぶります。「君の名は。」の登場人物のイキイキとした姿は、一朝一夕で出来上がったものではないのだと感じ取ることができます。

【秒速5センチメートル】

 本来の「君の名は。」のプロットは、「秒速5センチメートル」のように「二人をすれ違いさせる」予定でした。そこをプロデューサーの川村元気が、今の結末に変更したそうです。しかし、だからといって「秒速5センチメートル」の要素がないわけではありません。ラストに近いシーン、雪の降る東京ですれ違う瀧と三葉。このシーンは非常に「新海誠的」といえます。往年のファンは、ここですれ違って終わってもキレイだったと評しています。「秒速5センチメートル」で一つの高みに達した「切なさ」の表現。ここの切なさがあったから、ラストで巡り合えた喜びが倍増しています。結末だけを見ると毛色の違う二つの作品ですが、「心の葛藤を描く」という意味では、共通し、かつ深化させたといえます。

【星を追う子ども】

 「田舎の雄大さ、自然への畏怖」がテーマにあると思います。「さよならを知るための旅だ」というセリフもあり、生死についてがメインテーマとされていますが、人智を越えた存在が現れる等、大きなスケールで描かれている作品ともいえます。ファンタジーであり、自然や人ならざるものをダイナミックに描いたことで、「君の名は。」の片田舎の風景や、彗星の落下にリアリティを与えることに成功したのではと思います。

【言の葉の庭】

 もとより新海作品は風景描写が高く評価されていました。「星を追う子ども」で壮大な風景を描きましたが、そこから一転、日本の、さらに新宿御苑とその周囲という極めて限定的な世界を描いたのが「言の葉の庭」です。特別な風景ではない分、雨の日、晴れの日、雷、雨上がりの空…。天候が登場人物の心情を何よりも表現していました。こうした表現技法は「君の名は。」にも使われています。散々だったデートの終わりの空、初めての入れ替わりで三葉が見た東京の景色―。また、登場人物そのものや、登場人物をモチーフにしたキャラクターが登場していることから、新海監督の思い入れの強い作品ともいえます。

【クロスロード】

 「遠く離れたまだ知らない人と出会う」「片方は田舎、片方は都会」と、かなり「君の名は。」に近い設定のショートアニメです。この作品の反響が大きかったことが、「君の名は。」は成功するだろうとGOサインが出たことにつながったのかもしれません。

 いかがでしょうか。以上のことから、「君の名は。」はこれまでの新海作品のエッセンスが凝縮された「新海誠BEST」といえます。これまでの作品と連動して「君の名は。」を楽しむと、また新しい発見がありますよ。

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