漫画×構造分析 『ONE PIECE』アラバスタ編を構造主義的に読み解く。1 ~鉄板パターンを考える~

 

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●パターンはつまり「王道」だ。

神話や物語には「パターン」がある。
姫がさらわれ、勇者が立ち上がり、仲間が集う。
偉大な導き手のもとで力を授かり、強大な敵を倒し、故郷へ帰還する……

あるいは、両親が殺されて復讐を誓った主人公が厳しい修行を経て力を得る。
並みならぬ冒険を乗り越えてようやく宿敵に刃をかけるも、
実は生き別れた兄だった……

パターンはつまり「王道」だ。
使い古されたパターンは時に陳腐に感じられる。
かといって、王道から外れ過ぎても面白くならない。
王道に乗るかあえて外すか、パターンはバランスが難しい。

そんなパターンをざっくりと分類・分析しようとする試みが、
文学における構造主義である。

キャラクターの性質や物語の展開などを分類し、
物語を構成する機能ととらえるのだ。
その構造主義を、大人気漫画『ONE PIECE』に持ち込んで、
構造主義的に読み解いて(こねくり回して)みようじゃないか。
……というわけだ。

まだまだ完結に向かう気配のない『ONE PIECE』なので、
物語全編ではなく、エピソード単位で読み解いてみたいと思う。
まずは、高い人気を誇るアラバスタ編を取り上げたい。
コミックスでいうと、第17巻末から第23巻末まで。
話数でいうと第154話から第216話の全63話分だ。
短い話数の中に見せ場がギュギュっと詰まった、名エピソードだ。

なお、この記事の執筆者・kurageは
構造主義の権威でも文学研究者でもない、ただの漫画ファンだ。
だから、構造主義とは何ぞや、文学における構造主義ってなんやねん、
というところへは深く突っ込むつもりはないのであしからず。
本物の研究者の方々に怒られそうなので、
あくまで構造主義「的」と逃げ道を残して、さっそく本題に入ることにする。

 

●『ONE PIECE』の鉄板パターンとは

構造主義うんぬんについてはいったん置いて、まずは、
『ONE PIECE』の鉄板パターンについて考えてみよう。
『ONE PIECE』の大筋は、「ルフィが海賊王を目指して冒険をする」という
非常にシンプルなものだ。
付随して、仲間たちも○○になる・○○を見つけるといった夢を持っている。
昔話や英雄譚のように、魔王を倒すだとか、姫を救うだとか、
そういうシリアスな事情つまり「使命」は一切抱えていない。
(ただし、唯一ルフィが「使命」をもって動いたエピソードがある。
それは杯を交わした兄・エースを救うために奔走する「頂上決戦編」だ。
 このエピソードについても、いずれ構造主義的分析を試みてみたい。)

この「使命」というのが、物語を進めていく上でかなり重要な要素だと思う。
『ベルセルク』でいえば、ガッツはグリフィスを倒すことを使命としている。
『NARUTO』でいえば、ナルトは「火影になりたい」という夢とは別に、
「サスケを連れ戻す」「戦争を止める」といった使命の元、行動している。
多くのスポーツ漫画では、勝利こそが主人公たちの「使命」であり原動力だ。

使命なき放浪では、お話がいまいち盛り上がりにくいといえる。
そのため、『ONE PIECE』では航海でたどりつく島ごとに
何らかの「使命」をもったキャラクターが登場し、
「○○編」といったエピソードが展開されていく

そもそも、仲間入りした主要キャラたちも「使命」を持って登場した。
ウソップもナミも故郷の村を守るという使命を持っていたし、
サンジやチョッパーは並みならぬ恩がある人を守ろうとしていた。
何らかの「使命」をもっているキャラクターを、ルフィが助け、
「使命」を果たしたとき、仲間入りする……
というのが『ONE PIECE』の鉄板パターンといえるだろう。

アラバスタ編では、「国を救う」という使命をもって、
王女・ビビが登場する(雑魚キャラ→主要キャラへの転換は見事だった)。
しかしご存じの通り、アラバスタ編ではビビは仲間入りせず
 最終的にはアラバスタに残ることを選択する。
『ONE PIECE』的鉄板パターンからの「外し」
これがアラバスタ編の面白さというか完成度の要かもしれない。
ビビが仲間入りを選択しなかったからこそ、
拳を振り上げるラストの名シーンが生まれたのだから。

さて、次の記事ではいよいよ構造主義的分析に踏み込んでみたいと思う。

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