【レビュー】 医龍 作者:乃木坂太郎

 電車の吊り広告や書店の平積でよく見かけるので、かなり気になっていたマンガである。それで試しに第1巻だけ買ってみたところ、あまりの面白さにやみつきとなり、次々と続刊を購入するはめになってしまった。

 外科医の朝田は、大学病院の白い巨塔に反発し、不遜な態度をとるものの、抜群の外科技術を持ち、患者には優しい男なのである。まるで手塚治虫のブラックジャックのようだが、ブラックジャックのように裏世界で暗躍するわけではない。彼は超一流の大学病院に乗り込んで、医局や教授の威光を無視しながら、堂々と本来の医療活動を行うのである。

 またマンガと言いながらも、医学界のことや医療関係の知識について、かなり造詣が深い。原案が永井明、画は乃木坂太郎が美麗なタッチで描く。
 医学用語が頻繁に出てくるが、※印をつけて画の脇に説明文が入る凝りよう。また医療よりも、学会での論文発表に血道をあげる日本医学会の病巣を、容赦なく暴いてみせてくれる。とにかく勉強になるし、胸のすくマンガなのだ。東大受験をテーマにした『ドラゴン桜』でも、かなり受験に対する薀蓄を得たが、この『医龍』はそれを遥かに凌駕している。
 また主人公の朝田は、超天才外科医というだけでなく、患者を大切にし、何よりも人命を尊ぶ。その姿勢こそ「医は仁術なり」そのもので、かなり好感を持てる。

 医学界を会社に当てはめると、教授を絶対的頂点として崇める医局員達こそ、ワンマン社長に這いつくばるサラリーマンそのものじゃないか。それほど出世したいのか。仕事を出世の道具にするな!
 普通のサラリーマンならいざ知らず、人命を預かる医者達の実態がこれほど酷いとは。日本の医大というものの構造を、根底からひっくり返さなくてはならないね。
 現実には、朝田のような理想的な医者は数少ないかもしれない。しかしこのマンガを読んだ青年達の中から、この腐りきった日本の医学会を変革する勇者が現れるはずである。

この記事は蔵研人様の許可を頂いて転載しております。
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