【レビュー】 俺と悪魔のブルーズ 作者:平本アキラ -監獄学園の作者が送る黒人差別とブルーズと殺人鬼の物語- 

監獄学園で有名な平本アキラの作品

最近、監獄学園でブレークしている平本アキラ氏の作品です。
監獄学園のように可愛い女の子や切れたギャグが見れると思ったら大間違いです。
同じ作者が書いたとは思えないハードな漫画です。
絵も全く違います。言われなければ同じ作者とは絶対に気づかないと思います。

アメリカの実話映画のような作品

1920年代黒人差別の激しいアメリカ南部を舞台にしたブルーズを愛する黒人男性RJの物語。

RJは悪魔と取引してものすごいギターテクニックを手に入れるという設定です。
悪魔との取引は良くある漫画的なものでなく気がついたら半年間家にも帰らずにギターに没頭していたというものでした。
とはいえ、解釈がいろいろ出来るような描き方です。

半年間ギターに没頭している間に妊娠していた妻は出産が原因で亡くなり子供もその時に亡くなってしまいました。
悪魔に魂を売ったということでしょう。
そしてRJはクライドというギャングと遭遇し様々な事件に巻き込まれていきます。
クライドは、アメリカの有名な殺人犯ボニー&クライドをモデルにしているようです。
アメリカという社会をモチーフにとっているという事だと思います。
RJはギターテクニックで生き延びたり逆に窮地に追い込まれたり白人と黒人の奇妙な友情も生まれていきます。
現在4巻まで販売されているのですが休載になってしまったようで5巻以降の発売は予定されてないようです。

平本アキラの振り幅恐るべし

それにしても監獄学園と同じ作者だとは全く思えない作品。ただ単に同姓同名なだけじゃないとかと思ってしまいます。
もう絵柄が変わりすぎて『俺と悪魔のブルーズ 』の連載を再開できないのではないかと思ってしまいますが、本当に全く違う絵なので描き分け可能なのかもしれないとも感じます。

またこういった深みのある、人間の本性に迫るような作品を作り出せる作家としての奥深さが、監獄学園を単純なエロ学園漫画以上の作品に仕上げているのかもしれません。

本当に絵も作風も全く違うので驚きましたし、未だに同姓同名なだけじゃないかと疑っています。

-講談社 「俺と悪魔のブルーズ」 作者:平本アキラ-

 

【レビュー】 HUNTER×HUNTER ハンターハンター 作者:冨樫義博

ジャンプで連載

この作品が始まった時、実はそれほど期待をしていませんでした。
冨樫義博氏の前作『レベルE』はかなり面白かったのですが『ハンターハンター』は雰囲気があまりに少年漫画風だったので、「子供向けを描き始めたのかな」と思ってしまいました。
しかし実際にはそんな事はありませんでした。漫画のお約束をうまく壊しながら新しい漫画体験を贅沢に提供してくれる作品で驚きました。
お約束を強く感じさせるために典型的な作品設定(最初はそう見えた)が必要だったのかもしれません。
なにせゴンはなんとなく『ドラゴンボール』の孫悟空を彷彿とさせるわけです。

ハンター試験での壁壊し

勝負の前提であるルールの盲点を付いて問題を解決するというのが、この作品の常套手段だと思います。
そういう意味でハンター試験でのゴンの壁壊しは衝撃的でした。あのシーン以来ぼくの中ではこの作品は注目し続けないといけない作品になりました。
今でこそハンターハンター的に、ちょっとズル(前提ズラシ)して問題解決する作品をよく見るようになりましたがこの作品の影響だと思いますね。

残酷な世界

この作品世界はとにかく無慈悲で残酷です。現実世界の残酷な部分を強調して作品に取り入れているという感じでしょうか。
その残酷さに素直に伸び伸びと対応していく主人公ゴンが逞しくて見ているだけで爽快感があります。陰と陽を上手く見せています。

必要以上にもったいぶらない

最後の敵との対決とか伏線の回収とかを必要以上にもったいぶらないのがこの作品のいいところです。当初からの主人公の目標も現在では叶えられました。

単行本で読めばテンポいい

当作品は2014年3月の時点で32巻まで発売されています。この32巻は非常に濃密です。無駄な引き伸ばしなどなく非常にテンポがいいです。

休載を繰り返す週刊連載

それもそのはず週刊連載では休載を繰り返しています。最近また掲載されていません。
連載が始まってからの休載率は50%くらいでしょうか?
割りと近い時期に始まったワンピースやナルトが60巻を超えてきている事を考えると32巻のこの作品はやっぱり掲載率が半分くらいですね。
ちなみに各開始時期です。

ハンターハンター 1998年14号開始
ワンピース    1997年34号開始
ナルト      1999年43号開始

読者と作者の幸せな関係

とはいえ、毎週連載を実現するために質を落としてほしいとは思いません。よく考えられて練りこまれた話を作るために時間がかかってもいいと思います。
ぼくの個人的な意見ですが「キメラアント編」のような凄いラストを用意するのに休載が必要ならドンドン休んで欲しいですね。
今の質で今のスピードなら十分だと思います。無駄な戦闘を増やしたりすれば休まないで続けられるでしょうが、そんなルーチンワークは読みたくありません。
今、ぼくは読者として幸せです。
作者は一つの作品を10年も20年もかけて描き上げる時代になってきました。一生をかけて描き上げるような場合もあるでしょう。
それならそれで読者としてのぼくも一生かけて読んでいきますから、いいんです。幸せじゃないですか一生読める作品があるなんて。

編集部は大変だろうな

人気漫画が休載すれば雑誌の売れ行きは落ちるし単行本の売上も合計で減ると思います。
そういう意味では会社的には大変なんだと思います。読者にとっては60冊の密度を30冊の価格で読めるわけですからお得ですけどね。

取り敢えず読んでおこう

まだこの作品を読んだことない人は取り敢えず読んでおこう。ワンピース、ナルトとともにジャンプの看板になっているのは伊達じゃないと体感出来るはずです。

 -集英社 「HUNTER×HUNTER」 作者:冨樫義博-

 

【レビュー】 波打際のむろみさん 作者:名島啓二

著者:名島啓二
ジャンル:現代ほのぼの
特色:ほのぼの 弱恋愛 ギャグ お笑い 人魚 人外

高校でたった一人のフィッシング部部員、向島拓朗(むこうじまたくろう)が、近所の堤防で博多弁を話す人魚むろみさんを釣りあげるところから話しは始まります。

むろみさんの行為や発言に突っ込むのが拓朗の役目という感じで進んでいくほのぼのお笑い漫画です。

他にも様々な人魚が出てきたり、河童イエティハーピーなども出てきます。

非人間が織り成す様々な不満や欲望が語られるのですが、無理やり理論だててるのになるほど、と思わず納得するシチュエーションもあったりします。

話の間に海の生き物登場人物(怪物?)解説などもあり、作者の趣味がうかがえます。

作者の名島氏は、この作品を連載する前、月8ページの漫画を書いていた(聖☆ビスタチオ学園)らしいのですが、それでも生活は安定していたので週マガ連載に拒絶反応があったそうです。

連載から半年足らずで10kg減り、胃腸を患いながらも頑張って描かれているそうです。

たまたまテレビの新しいアニメをチェックしている時にこの作品を知りました

最初はそこまででもなかったのですが、1話をみてなかなか面白そうと思っているうちに単行本を買いそろえてしまいました。

私はイエティと、人魚たちが酔っぱらうと流れ着く海岸にいるシェルという女の子お気に入りです。

ほのぼのお笑い好きな方は、ぜひ読んでみてください。

 

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【レビュー】 紅殻のパンドラ -GHOST URN- 漫画:六道神士 原案:志郎正宗

漫画:六道神士
原案:志郎正宗
ジャンル:近未来ファンタジー
特色:ロボット 紛争 微ギャグ 弱下ネタ 萌 ほのぼの

近未来の高度に発達した情報ネットワークが世界を覆い始める一方、紛争や災害で政治経済が混沌とした時代が背景です。

 全身義体の主人公、七転福音(ななころびねね)が、舞台となる人造リゾート島に向かう船の上で、実業家のウザル・デリラという女性と出会うところから物語が始まります。

 この島で、ウザルを狙った大規模テロが発生し、福音はそれに巻き込まれていきます。

 その中で、福音はウザルの所有する戦闘アンドロイド、クラリオンのおなかにある端子に接続する事で、「パンドーラ・デバイス」にアクセスし、スキルを使う事ができるようになります。

 このスキルをどう活かすかがカギとなりますが、福音自身はこの能力を使う事にためらいや引け目を感じていきます。

 この先の福音の成長が気になる漫画です。

本来なら世界征服くらいできそうな能力なのですが、ほんわりした福音の性格のおかげで秩序は保たれています。

また、福音はクラリオンを溺愛していて、福音を守るように命令されたクラリオンの反応との差がいい萌えっぷりです。

福音とクラリオンの身元引受人となった崑崙八仙拓美(ころばせたくみ)も面白い萌えキャラです。

幼い外見ですが、電脳マーケティングを牛耳る崑崙八仙財団の総帥で、大企業が名前を聞くだけで全力で媚びる実力者です。

この媚びる様は、六道氏の十八番で私は好きです。

他にもウザルを裏切ってぼこぼこにされる、笑えるくらいに可哀想な部下の女の子たち。

事件を報道してて巻き込まれる、イケイケ新人レポーターのブリ○○・○ー○○○(いつも名前を全部言わせてもらえない)の無駄な努力など、サブキャラクターも魅力です。

この作品の原作者は志郎正宗氏です。

攻殻機動隊など、近未来のロボット世界では有名な漫画家が、なぜか六道氏に漫画を書いてもらっている異色の漫画です。

巻末に志郎氏が書いたラフイラストがあるのですが、六道氏は単行本収録の場で初めて見ると言う裏話が載っています。

志郎氏のラフ六道氏の漫画ギャップも楽しめますので、ぜひ読んでみてください。

 

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【レビュー】 ヒストリエ 作者:岩明均


あまりに面白いアレクサンドロス大王の書記官エウメネスの生涯

ヒストリエは、『寄生獣』『七夕の国』などで有名な実力派作家 岩明均氏の作品で、実在の人物エウメネスの人生を題材にした歴史ロマン漫画だ。

エウメネスとはどんな人物かというと、かの有名なアレクサンドロス大王の書記官を務めていた人物で前半生がかなり謎な人物だ。
それはヒストリエ風に表現すると記録する側から記録される側に移ったからとなる。
彼はアレクサンドロスが生きている間は書記官としての任務を全うし彼が記録する側である以上自分の事を書きたくなければ書く必要もなかった。
しかしアレクサンドロス没後「ディアドコイ」と呼ばれる後継者戦争に巻き込まれていく事になり彼は記録する側からされる側に回った。

書記官という官職を作者なりに調理

ヒストリエのエウメネスの人物像は、飄々としていて名声や権力、黄金や美女に興味がなく、強烈に持っている欲は知識欲。
運命に翻弄されて軍人になるが本に囲まれる仕事を与えられると大喜びする。
生い立ちに大きな悲しみを持っているにも関わらず性格に歪みがなく人当たりも優しい。

そういった好人物として描かれている。
とは言え、作者である岩明氏は主人公だからエウメネスを好人物に描いたのではないように思える。むしろ好人物だったからエウメネスを主役にしたのではないか。
アレクサンドロスの歴史を描くに辺り同時代の人物を作者は散々調べただろう。少し時代は遡るもののヘウレーカという短編も執筆している。
激動の時代に綺羅星の如く群がる歴史上の人物の中でエウメネスこそ主役に相応しいと判断したのだと思う。

それにしても漫画というのは一つの作品を書き始めると長期連載に至る場合が多い。
昔読んだ岩明均氏のインタビューに、自分は幾つもの作品を器用にこなせるタイプの作家ではない。というものがあったと記憶している。
その言葉通り著者は2004年からヒストリエを連載し現在まだ8巻だ。
ほとんど10年経過した。現在の進行スピードからいけばあと20年は連載を続ける必要があるように思える。
作者にとってエウメネスは一生の仕事の相棒のようなものとなるだろう。

忠臣であり無敵のエウメネス

アレクサンドロス没後の後継者戦争でエウメネスはアレクサンドロスの正当な血統を守るために戦った。
そして兵力において不利があっても戦略、戦術を駆使しほとんど負けなかった。
最後は部下の裏切りによって捕らえられ処刑されるのだが知恵では誰にも負けなかった印象があり非常にヒーロー的だ。
エウメネスは諸葛孔明であり竹中半兵衛である。
誰もが素直に応援できる王道であり時代最高の頭脳とそれを行動に移す英雄的な胆力を擁していた。
にも関わらず日本での知名度はイマイチで素材としては最高だといえる。
エウメネス像を作者が自分で作ることが出来るのだ。そして既に日本でのエウメネス像はヒストリエのエウメネスとなっている。

名言の宝庫 ヒストリエ

ヒストリエの魅力に素晴らしい言葉の数々がある。
人生の指針になってしまいそうな素晴らしいパワーのある言葉だ。

”人の心は弱いもの……と言うより かなりあやふやで変形しやすいものだという事をこの経験は学ばせてくれた”

エウメネス ヒストリエ 2巻

”ぼくがスキタイ人である事と スキタイ人奴隷トラクスが どの時点で死体になっていたか解明する事は別の問題だろ?”

エウメネス ヒストリエ 2巻

”急ごう! 宝飾店なんかで待たせた日にゃ ペリアラの欲望はじゃんじゃか膨らむぞ!”

エウメネス ヒストリエ 2巻

”図書室で読むのは学校の授業とは直接係わらないモノが多いんだけど…… でも考えを組み立てたり 少し角度を変えて物事を見たりするのに役立っていると思う……それが学校の成績に出たんなら良かったよ”

エウメネス ヒストリエ 1巻

”今ふり返ると…… 全ての始まりは その”図書室”であったように思う”

エウメネス ヒストリエ 1巻

”誰にもじゃまされず ひとり書を読む…… 最も心地よい歩調で世界が広がってゆく”

エウメネス ヒストリエ 1巻

”地球の大きさからしたらほんのわずかだ”

エウメネス ヒストリエ 1巻

”えっどこですか 例えば!? 例えばどこが間違いなんですか!?”

エウメネス ヒストリエ 1巻

このように1巻、2巻を紐解くだけでも数々の名言が溢れてくる。
わたし個人としては「本、図書館」にまつわる言葉が非常に好きだ。

ヒストリエを読んでないなら人生の半分を損してる

大げさなようだがわたしはそのくらいこの本が好きだ。
一生読み続けると思う。
そして好きなモノだからこそ人にもオススメしたいと思う。
このレビューに触れた方が僅かでも興味を持ちヒストリエの1巻を手に取ってくれたならファン冥利に尽きるというものだ。

 

””は、講談社「ヒストリエ」 作者:岩明均から引用

 

【レビュー】 ヒカルの碁 漫画:小畑健 原作:ほったゆみ

僕が急に囲碁を再開したのには、理由があるのです。最近「ヒカルの碁」という少年マンガに夢中になっているからです。このマンガの影響で小・中学生の間で囲碁がブームになったと聞きました。またこのマンガの主人公は、進藤ヒカルという小学生なのですが、実は彼は全く囲碁など知らない子供でした。それがある日、祖父の家の屋根裏部屋で古い碁盤を見つけたのですが・・・・その時に平安時代の名人「藤原作為」の亡霊(といってもとてもハンサムでチャーミング)にとり憑かれてしまうのです。
 初めのころはヒカルにとり憑いた「作為」がヒカルの体を借りて碁を打ちます。そして囲碁界の最高峰である、「塔谷名人」の長男であり、天才小学生「塔谷アキラ」を簡単に負かしてしまうのです。名もないど素人のヒカルに打ちのめされたと錯覚したアキラは、もちろん「作為」の存在などは知るよしもなく、その後ヒカルを追いかけることになります。
 一方初めは囲碁に興味を示さなかったヒカル自身も、アキラを知ってからは、次第に囲碁にめざめてゆき、プロをめざしていくというお話なのです。 原作は女性なので、ちょっと少女マンガ風の味もしますが、とにかくス卜ーリー展聞が変化に富んでいて、楽しいし、なんといってもキャラがどれも個性的で魅力に溢れているので、あっという間にコミック25冊+別巻2冊を読破してしまいました。
 最終回の終わり方には消化不良感が残った人が多かったかもしれませんね。しかし僕は、余韻を残したまま、読者の心にヒカルの末来を託した『著者の良心』を買います。また最後にヒカルが言った『遠い過去と遠い末来を結ぶため』という言葉には痛く感動しました。まるで作為が一瞬甦ったように感じたからです。
 ちなみにこのマンガは、一応女流プロの監修つきですが、原作者がほとんど囲碁を知らない女性のためか、
棋符や囲碁技術の解説場面はほとんどないので、囲碁の解説書的な目的で購入しても全く役に立ちません。 逆に言うと、囲碁を全然知らない人でも、判りやすく楽しく読むことが出来るということになるのですね。

 

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【レビュー】 遥かな町へ 作者:谷口ジロー

48歳の会社員中原博史は、京都出張が終わって、真直ぐに東京の自宅に帰るつもりだった。ところが無意識のうちに、フラフラと故郷・倉吉へ向かう特急列車に乗ってしまう。そして変わり果てた倉吉の街中を、トボトボと歩いているうちに、いつの間にか亡き母の菩提寺へ来てしまうのだ。そして亡母の墓前で、昔のことをあれこれと考えていた。彼の父は彼が中学生のときに、母と自分と妹の三人を残して、突然謎の失踪をしてしまったのだ。その後二人の子供と体の弱い祖母を抱えて、母は一人で夢中になって働き、子供達が独立するのを待っていたかのように、過労のため若くして亡くなってしまったのである。
 母の墓前で昔のことを思い出しながら、うとうとして気がつくと、博史は心と記憶は48歳のまま、14歳の中学生に変身していたのだ。信じられないことだが、町に戻るといつの間にやら、そこは懐かしい34年前の故郷の風景に戻っていて、無くなってしまったはずの実家も復活しているではないか。もちろん家には父も母も祖母も妹もいた。
 つまり34年前の自分の体の中に、48歳の自分の心が、タイムスリップしてしまったのである。
 この手の展開はケン・グリムウッドの『リプレイ』と全く同じ手法である。ただ『リプレイ』の場合は、未来の記憶を利用して博打や株で大儲けし、美女を思いのままにしたり、という派手な展開であった。そしてある年齢に達すると、再び青年時代に逆戻りを何度も何度も繰り返すのだ。
 本作『遥かな町へ』は小説ではなくマンガであるが、『リプレイ』のような派手な展開や繰り返しはなく、じっくりと、ほのぼのとしたノスタルジーを喚起させてくれる大人向けの作品なのである。中学生に戻った博史は、実務で鍛えた英語力と落ち着いた雰囲気で、高嶺の花だった同級生の長瀬智子に好意を持たれて、彼女とつき合い始めるようになる。
 そして優しく美しい母、働きもので誠実な父、明かるくオテンバな妺、父母の巡り合いを知っている祖母達との、懐かしい生活が続くのだった。そんな楽しい中学時代を過ごしていくうちに、いよいよ父が失踪した日が近づいてくる。
 人は皆、もう一度人生をやり直せたらと、考えたことが必ずあるに違いない。でもそれは現在の記憶を持ち続けると言う事が条件だろう。そうでなければ、結局は同じ事を繰り返すだけで、全く意味がないからだ。
 しかし赤ん坊のときから、以前の記憶を持ち続けていたら、きっと化物扱いされるだろうし、自由にならない身体にイライラしてしまうに違いない。だからこの手の話では、青年時代あたりに戻るのであろう。
 もし自分も同じように、現在の記憶を持ったまま過去に戻るとしたら、どうしようか・・・だがそれは無しにしたい!。古い懐かしい思い出は、美しく改竄されたまま、そっと心の中にしまって置きたいし、再びふり出しに戻って生きてゆくことが、とても面倒な年令になってしまったのである。

 

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【レビュー】 バガボンド 作者:井上雄彦

 「天才バカボン」みたいで、言い憎いし奇妙なタイトルである。外国語で『漂流』というような意味らしい。 原典は吉川英二の『宮本武蔵』であり、吉岡道場へ辿りつく迄は、ほゞ原作に忠実だったが、その後かなり独自のアレンジを加えているようだ。
 大きな話の流れは変わらないのだが、武蔵以外の主な登場人物のストーリーを、かなり時間をかけて掘り下げ、作者独自の解釈を加えて面白く描いている。
 後半は、なんとなく作風が「平田弘史」や「白土三平」に似てきたようである。とりあえず第1章の1~20巻まで、一気に読了してしまった。
 この時点では、まだ佐々木小次郎も武蔵と戦っていないし、有名な吉岡一門との一乗寺下り松の決闘にも行きついていない。
 まだまだ先は長く、人気絶調なのに長期間休載されていたが、先ごろ構想新たに、第2章として雑誌掲載が再開された。さっそく21~22巻を読んだばかりだが、やっと吉岡一門との戦いの火蓋が切って落とされた。この調子だと一体あと何年間、何巻位迄続くのだろうかと気がかりである。

 

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【レビュー】 最終兵器彼女 作者:高橋しん

 タイトルからしても、仰々しくとてもユニークである。しかし本当に彼女がとてつもない最終兵器なのだから仕方ない。ところでどうして彼女「ちせ」が、最終兵器となったのか?
 彼女はサイボーグなのか?宇宙人なのか?敵とは一体何物なのか?国連軍はどうして力がないのか?そんな謎は一切明かされないどころか、話にさえ出てこないのが不思議というか、不自然で不親切ある。
 この作者の絵は、線が異常に細く、ラフ画のようなタッチなので、非常に見難いのだが、この独特なしんみりとした画風が、どことなく味わい深い感もある。ただシリアスな絵とギャグぽい絵が、煩雑に入れ替わるのが、かなりうざったい!。
 背景は『エヴンゲリオン』と似ている部分もあるが、この作品は「恋愛」に特化しているので、「戦い」そのものに期待してはいけない。
最近映画化されたようだが、あっという間に終了してしまい、もうすぐDVDが発売されるという。・・どうも最近、安易にコミックが映画化されている傾向だが、ほとんどの作品が評判悪いねぇ。まだ観ていないが、本作の映画もそのようだね。

 

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【レビュー】 デスノート (コミック) 漫画:小畑健 原作:大場つぐみ

 絵は『ヒカルの碁』の小幡健で、いつもながら非常に丁寧で綺麗な絵である。その関連性とは言わないが、この『デスノート』は、キャラの設定や全体的な構成が『ヒカルの碁』と共通している部分が多いよね。
 例えて言えば、両方とも原作ものだということ。ヒカルには、藤原作為という幽霊が憑いていたが、ライトにはリュークという死神が憑いていること。
 またライトには、Lという天才的ライバルがいるが、ヒカルにもアキラというやはり天才的ライバルが存在したのだ。
さらには、双方とも大人が読んでも、全く違和感がなく、異例の大ヒットを遂げている。また皮肉なことにラストが無理やり書かされたような、中途半端なエンディングであることも同じだ。
  『ヒカルの碁』の原作者は、「堀田ゆみ」という女性であり、『デスノート』のほうも、やはり「大場つぐみ」という新人女性なのである。しかしこれだけの大作を、新人女性が書けるはずもなく、実は大物作家の偽名だという噂もあるようだ。
前述した通り、二つの原作に共通点が多過ぎることを考えると、『大場つぐみ』と『堀田ゆみ 』は同一人物なのかもしれない。
 では何故偽名を使う必要があるのだろうか。あくまでも私の勝手な推測だが、当初の企画は編集部から出され、それを堀田氏に依頼したのではないか。しかし堀田氏自身は、大量殺人を正当化したような作品を書くことに抵抗があり、照れ隠しで『大場つぐみ』と名乗ったのかもしれない。 
 ことの成り行きはどうでもよいとして、とにかくこの作品がこれほど大ヒットし、映画化されるとは誰も想像しなかったに違いない。
 「死神が落したノ一トに、顔を知っている者の名前を書くと、書かれた者は死ぬ」という、一見誰にでも考えられそうで、かつ荒唐無稽なアイデアは、編集部員が考えたのだろう。しかしその単純な発想に複雑なルールを絡ませ、ミステリー小説のような緻密な心理描写を綴ったことが、大成功の原因だと考えたい。
 もしこうしたら、ああするし、こうしなければ、あれをああする。あれがああ出来なければ、そうこうするが、そうこうしても相手が反応しなければ、その逆も考える。などなど作者にしか分からないようなことまで、細かく考え抜いて伏線を張る用意周到な主人公ライトとライバルL・・。
 ある意味開き直ったような、神がかりの推理合戦が展開するのだ。少なくとも「L編」まではこれで良かった。そしてLが絶対的に知り得なかったことで、ライトに敗れたことも納得出来るはずである。だから本来の流れからすると、ここは「L編」で終るべきであったのだ。
 ところがそれでは正義(何が正義か悪かの判断は難しいが、とりあえず法律上の正義としておこう)が悪に敗れることになってしまう。しかし少年誌に掲載している関係上、そうした終わりかたをする訳にはゆかないのも碓かである。
 それで無理やり「ロス編」を作ってしまったのだろう。(当然大ヒット作の継続による收益向上政策があったことも否めないが・・)
 この「ロス編」に登場するニアとメロは、遥かにLに劣るはずである。それにも拘わらず、Lを凌駕してしまったのである。もちろん作者もそのことは承知していて、二人が組み合わさったから、或いはLが解明した資産を受け継いだからという言い訳は用意しているようだ。
 もちろんそのことは判っているが、それにしても後半のライトの冴えなさと傲慢さは一体どうしたことか。やはり無理があったのである。
 そのことに多くの読者が不満表明をしたことにより、近々最終巻をフォローする追録巻が出版されるらしい。これは浦沢直樹の『20世紀少年』と全く同じ現象である。
 最近商業べースや社会の風評を重視し過ぎて、無理と連載を引き伸ばしたり、突如中止にしたりと、読者不在の措置が多発しているように感ずるのだが、それは私だけなの思い込みなのだろうか・・・

 

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