新海作品の魅力 ~「ほしのこえ」から変わらず伝えたいもの~

ここまで「君の名は。」を中心に、作品の魅力や考察に迫りました。今回はそれら「新海作品」の根底にある、普遍的なテーマを探っていきます。全ての作品に共通するテーマは何か。

【風景のこだわり】

他のアニメ映画との比較でよく挙げられるのは、映像の美しさです。「君の名は。」や「秒速5センチメートル」では、そこに聖地巡礼として訪れるファンが多く、そのことからも映像が持つパワーを感じます。

加えて、特定の場所以外にも、時間や季節から切り取った風景も作品を彩っています。例えば「空」です。

「雲のむこう、約束の場所」では青空を割くように飛ぶ白い飛行機という構図。「言の葉の庭」では変化の激しい梅雨空。「君の名は。」ではカタワレ時がそうです。

こうした「空」への思いは「ほしのこえ」にてすでに表現されています。美加子と昇の2人で自転車に乗りながら夕焼け空を見上げるシーンがあります。ここはカタワレ時の原点かもしれませんね。

さらに言うなら、昇が「思いが、距離や時間を越えることだって、あるかもしれない」というセリフがあります。このセリフが実現したのが「君の名は。」です。新海監督が、初心を大事にしていることが伝わってきます。

【日常を愛おしむ】

空の他にも、新海作品では日常あるものが美しく見せています。

「ほしのこえ」では、美加子が「昇くんとまた二人で、コンビニでアイス食べたい」と願いました。宇宙船に乗って、色々見たり感じたりした美加子が願うのは、昇との日常でした。

「雲のむこう、約束の場所」では、佐由理と交わした遠い約束を叶えるべく、物語が動き始めました。浩紀と拓也は3人で過ごした日々、日常が離れずに心に留まっていたからです。

「秒速5センチメートル」ほど、日常のを綺麗に綴った作品はありません。この作品に特別な要素はなく、大なり小なり視聴者にも通ずる体験があることを題材にしています。

「星を追うこども」は、非日常な舞台や出来事が多い作品です。しかし、だからこそ田舎町の日常や風景、人物の心理描写がリアルです。

「言の葉の庭」は、「雨の日だけの特別な逢瀬」というのは特別感がありますが、雨降りの新宿御苑というのは別段特殊な状況ではありません。それでも雨が嵐が、雨上がりの空が、作品に表情をつけています。

「君の名は。」の見どころは、彗星落下直前かもしれません。しかし、瀧と三葉が互いを恋愛対象として意識し出したのは、入れ替わりの日々―。「前前前夜」が鳴り響くあのシーンです。

【まとめ】

「情感あふれる風景は、どのようにして作られるのですか」という質問に新海さんはこう答えています。

「何か特別な風景を探しているわけではない。秒速5センチメートルの舞台が参宮橋なのも、当時その近くに住んでいたというだけ」

いくらでも空想やファンタジーを描くことも出来るアニメ映画において、新海さんのこだわりを感じる発言でした。ぜひ新海作品を視聴する際は、日常は光で満ちていることを感じてほしいと思います。

「君の名は。」と性格

風景のリアリティや切なさ等、魅力盛りだくさんの「君の名は。」。このサイトにて、これまで様々な切り口で作品の魅力を伝えてきました。今回は、瀧と三葉の人物像に迫ります。言動等を元に、二人の性格や深層心理を探っていきます。

【瀧】

瀧の人となりは、三葉と入れ替わっている時によく表れています。奥寺先輩が言っていた「喧嘩っ早い」は、机を蹴飛ばすシーンや、町長の胸ぐらを掴むシーンで明らかになっています。この「喧嘩っ早い」はプラスに考えると、「行動力がある」という見方もできます。彼の持ち前の行動力は、糸守での日々でいかんなく発揮されています。

例えば、「カフェなんてない」とあきらめムードだった空気の中、ノコギリで木を切って、即席のカフェを作る。体育の授業でイキイキとバスケをする(生徒の反応からして、三葉は体育で活発に動くタイプではなかったと思われる)。そうした行動から見て取れます。

記憶の絵を頼りに岐阜まで行く等、とどまることを知らない瀧の行動力に学ぶことも多いです。しかし、奥寺先輩へのアピールにその行動力は発揮せず…。

 

【三葉】

三葉の気持ちの変化を見ていると、「性格」は変えられる!と思います。入れ替わりが起こる前の三葉は暗い影を背負っていました。瀧からメールで「もっと堂々としろ」と書かれていましたが、男女ともに好かれる三葉(in瀧)から分かるように、元々魅力のある子だったのです。

三葉は瀧に感化されます。その結果、一人で東京に向かうという行動に移します。

奥寺先輩が「瀧くんは誰かと出会って、その子が瀧くんを変えたのよ」と言いましたが、三葉に対しても同じことが言えます。入れ替わりの日々の中、東京や新しい男の子の友人、奥寺先輩との出会いが、彼女に勇気を与えたのだと思います。

 

【まとめ】

「性格」とは生まれ持ったものではなく、「行動」が「性格」になります。そして、人との出会いが良い結果をもたらすことが往々にしてあることを、「君の名は。」は伝えています。貴方はどの登場人物に心を揺り動かされましたか?

「君の名は。」と仕草

前回記事にて、「君の名は。」の魅力の一つに、リアリティなところと書きました。風景のみならず。涙に着眼点を置いても、リアルを追求していました。

今回も同じように、あるものに注目します。今回は「仕草」です。

「仕草」の中でも「男女の仕草の違い」を見ていきます。言うまでもなく、「君の名は。」は瀧と三葉、入れ替わった二人の男女の物語です。故に作中で男性らしい、女性らしい仕草がいくつか見受けられます。それらを紹介していきます。

◆男性的仕草「瀧」

まずは瀧の仕草から見ていきます。分かりやすいものが、隕石から糸守町を守ろうと、テレビの前に決意を固めている時です。腰に手を当てて堂々と立っている様は、三葉にはない仕草です。

他にも、坂道を走るシーンが、瀧本人と三葉に入れ替わっている時の瀧でそれぞれあります。比較してみると違いは明らかなので、声でも行動でもない性差が見えてくる興味深いシーンです。

◆女性的仕草「三葉」

次に三葉の仕草です。ここでは入れ替わった時のとあるシーンを抜粋します。入れ替わりのルールをお互いのスマホに残すシーンで、瀧(in三葉)は電車の中でスマホを操作しています。この時の足に注目。足を閉じて若干交差させています。

この仕草は大変女性的な仕草です。交差、すなわちクロスさせる仕草です。逆の仕草は大きく足を広げて座るになりますが、この仕草は偉そうなオッサンがする仕草です。

クロスの技法は臨機応変に使えます。カフェで、左にある飲み物を右手で取ったり、足を組み変えたり、逆方向やクロスを意識することで、異性への自然なアピールとなります。女性を意識してほしい相手と接する際、こうした「モテ仕草」を知っておくといいでしょう。

◆女性的仕草「奥寺先輩」

最後に奥寺先輩です。流石はアイドル的人気の奥寺先輩です。上記の「モテ仕草」を自然に行っています。瀧との初デートの際、向かい合っている瀧の右手を、奥寺先輩は右手でつかみます。ここに「クロスの法則」が発動しています。

また、クロスではない場面で、岐阜に訪れた時、ラーメンを食べる奥寺先輩が、髪をかき上げて食べていますよね。この仕草、実は「モテ仕草」です。足もそうですが、髪も女性らしさが出る体の部位なので、男性はドキッとしやすいとされています。髪をかき上げる他に、髪を結ぶ、おろすといった仕草も男性は弱いです。

いかがでしょうか。「君の名は。」の登場人物から、仕草の重要性を知っていただければと思います。

「君の名は。」と涙

「君の名は。」には数々の名シーンがありますね。手のひらに書かれた「すきだ」を見て、駆け出す三葉。神社に続く階段で再会する二人…涙なくして語れないシーンです。

この記事ではそんな「涙」に注目してみます。瀧と三葉は別に泣き虫なわけではありません。故に二人が涙を流す場面は印象に残ります。そういったシーンから「涙」について考えていきます。

◆「涙」のシーン◆

では、劇中で瀧と三葉が涙を流したシーンを振り返ります。

①入れ替わった瀧が、口噛み酒を奉納した後、目覚めた時(瀧)

②瀧と奥寺先輩のデートについて思いを巡らしている時(三葉)

③瀧が口噛み酒を飲んで再び三葉と入れ替われた時(瀧)

④カタワレ時の山頂で、瀧と出会えた時(三葉)

⑤三葉との出会いの後、瀧が三葉の名前を思い出せない時(瀧)

⑥テッシーと共に町民に避難を呼び掛けている時(三葉)

⑦手のひらに書かれていた「すきだ」の文字を見た時(三葉)

⑧長い階段で二人が言葉を交わした時(瀧・三葉)

◆三種類の涙◆

涙には三種類の涙があります。「嬉しい涙」「苦しい涙」「無意識の涙」です。

先述したシーンはそれぞれ

「嬉しい涙」…③④⑦⑧

「苦しい涙」…⑤⑥

「無意識の涙」…①②

に分類できます。

そして、この三種類の涙の内、「嬉しい涙」と「無意識の涙」は目尻から、「苦しい涙」は目頭から流れやすいです。

理由としては、嬉しい涙や無意識の涙を流す時は、顔は正面を向いているか上を向いているかです。よって涙はより低い位置にある目尻に向かいます。一方、苦しい涙は、眉間にしわが寄っていたり、うつむいていたりすることから、涙が目頭に向かいます。

もちろん例外もあります。③は嬉しすぎて表情がぐちゃぐちゃになっているので目頭からも涙が溢れています。ただ、⑤や⑧の涙の流れ方はとても自然です。悲しい時や嬉しい時の涙はこうなるということをわかって描いてあると思いました。アマチュアの絵師の中には、目と同じ大きさの涙を書くような人もいます。一つの表現の形かもしれませんが、新海誠作品は「リアリティ」が一つの特長なので、こうした細かいところの配慮も、丁寧な仕事ぶりが見て取れました。

秒速5センチメートルはBADENDなのか

新海誠監督の長編アニメ作品の3作目「秒速5センチメートル」。

初恋の二人が結ばれずにすれ違って終わることから、「バッドエンド」だという声もあります。その意見について考えていきます。

そもそも「結ばれる」でなければハッピーエンドとはいえないのでしょうか。

ラストシーンでタカキは、踏切を渡った後にアカリの存在が未だ強く心の中にあることを再認識します。そして強い視線を前に向けます。「君の名は。」で「すきだ」の文字を見た後の三葉のように、強い目です。

「初恋の素敵な記憶と共に生きる」

これは一つのハッピーエンドともいえます。

ではもし、タカキとアカリが結ばれ、初恋の相手同士で夫婦となったらどうなっていたでしょう。もちろんファンとしてはずっと幸せな二人でいることを願います。

しかし、生活を共にすることで、もしかしたら相手の嫌な一面ばかり見るようになってしまったり、当時とは違う感情、それも好ましくない感情が互いに芽生えてしまったりするかもしれません。

描写こそありませんが、アカリもタカキのことを強く愛おしく思ったままだと思います。そう考えると、素敵な初恋がそのまま壊れずそこにあり続けることは、十分幸福なのではないでしょうか。

ちなみに、初恋の相手と結婚するというケースはどれくらいあるのか。「初恋の人との現在の関係はどうなっているか」を20代~50代の人を対象に、ライフネット生命保険が調査しました。

結果、「配偶者・婚約者」と答えた人の割合は1%でした。初恋の人と結ばれる確率は100人に1人というデータでした。初恋が結婚までつながることは稀なケースであるとわかりました。物語の中で現実のデータを出すのは野暮かもしれませんが、初恋同士が結婚までいかなかったことで二人を責めたり嘆いたりすることはないと思います。

加えて「思い出に残っている人(どこで何をしているか知らない)」と回答した人は84%という結果でした。その中には苦い思い出のままの人もいると考えると、タカキやアカリ、少なくともタカキの心に光が差し込んだラストは、ハッピーエンドだと私は思います。

「君の名は。」徹底考察!① ~なぜ二人は恋に落ちてたのか~

2016年夏に上映されたアニメ映画「君の名は。」

評判が良く、2018年1月に地上波でも放送が決まり、今なお多くの人に愛されている作品です。

その「君の名は。」を30回は少なくとも視聴した私が、様々な視点で考察したり、マニアックな小ネタ・見どころを紹介したりしていきます。毎週1回、「君の名は。」の新しい発見を読者の皆様に届けていきたいと思います。

第1回は、「なぜ、瀧と三葉は恋に落ちていたのか」です。

彗星が落ちる間際に、手のひらに書かれた「すきだ」の文字を見るシーンは、とても胸を打たれる名場面ですね。しかし、あの場面以外に、明確に恋心を伝えるシーンはなく、いつ恋愛感情が芽生えたかが、視聴者の中にはピンとこなかった人もいるようです。そこで、今回は二人が恋に落ちていった、3つのステップを考えていきたいと思います。

1.性差を意識せざるを得ない状況だったこと

二人が入れ替わりをして、すぐ意識したのはお互いの体でした。特に三葉は、入れ替わりをくり返ししていく中で、しっかりした寝間着を着ることで警戒しました。ただ、年頃の若い二人は、禁止事項やお互いのことを気にはしながらも、異性の体に興味津々でした。男女として気を付けなければいけないあれこれを考えて生活していたわけです。友人としてより、気にかける異性として最初から見ていたと言えます。

2.二人が恋愛に対してうぶでピュアだったこと

二人は異性に対して全く免疫なしといった様子でした。例えば瀧は、奥寺先輩とのデートは初デートで右往左往。三葉も、司の顔が至近距離に来た時と、高木の笑顔で東京の男子のスマートさに惚れ惚れ。友人も入れ替わった相手も、今まで接してきた同級生らとは違う体験でドキドキしっぱなしだったでしょう。「つり橋効果」に似たような特別な環境、シンデレラやラノベの異世界転生みたいな気分で、恋に大胆になれたのかもしれません。

3.お互いが自身のスペックの高さに気づいたこと

物語の最初、「こんな町いややー」と嘆く三葉。現状を打破できずに暗い様子を見せていました。瀧も奥寺先輩を想いながらも、それまで行動に移せなかった。二人に共通していたのは「自信のなさ」でした。しかし、入れ替わったことで、瀧は自分が奥寺先輩とデートできる力があること、三葉は男子にも女子にも告白される魅力があることが分かります。「何やらかしてんの!?」とお互い驚きますが、本心は悪い気持ちじゃなかったと思います。恋のドラマが両者に起きたことで、意識が向いた可能性があります。

いかがでしたでしょうか。次回日曜日に更新します。次回のテーマは「パーフェクト美女、奥寺先輩の魅力を探る!」です。

それでは、また。

笑ゥせぇるすまん「日曜クラブ」より ~なぜ笑ゥせぇるすまんは長く愛されるのか~

「笑ゥせぇるすまんNEW」が2017年に放映される等、「笑ゥせぇるすまん」は実に長く愛されている作品です。今回は、その人気の理由をアニメ79話「日曜クラブ」を例に説明します。

【あらすじ】

内名木(53)は、月曜日にどうしても遅刻してしまう「月曜拒否症」。このままでは全面的な会社拒否症になると警告した喪黒は、彼を「日曜クラブ」に連れて行き…。

アニメ版のこの話の結末は大変おぞましく仕上がっています。数多のうめき声が建物中に響き渡ります。しかしこの結末こそ、笑ゥせぇるすまんが愛される理由を感じます。ポイントは「恐怖」と「比較」です。

 

まずは「恐怖」です。そもそも「怖いもの」を好んで見たがる人が少なからずいます。笑ゥせぇるすまんだけでなく、ホラー映画やデスゲーム系のマンガ等も人気がありますね。

これは、タナトス(死の欲動)といわれ、人の心にはエロス(生の本能)とタナトスが、コインの裏表のように存在しています。コインの「表」を認識するためには、「裏」を見る必要があります。それと同様に、人は自分の「生」の有難みを知る手段として、あえて「死」に向き合うことで、バランスを取るのです。バランスが取れると、人は落ち着きを払えるようになります。

次に、「比較」です。喪黒に唆される人物は総じて心の弱さを露呈しています。彼らを見て我々はどんな気持ちを抱くでしょうか。

「あ~あっ」と憐れんだり、「しょうがないなぁ」と呆れたりと、彼らを下に見ることはあっても上には見ません。

これは「社会比較理論」の「下方社会的比較」といい、自分と自分より劣る人を比べる心理です。効果として、「自分の境遇はあの人よりはマシ」と、優越感や自信を得ることができます。

この2点は、笑ゥせぇるすまんの話ほぼ全てに当てはまります。生を実感し、ホッとする。つまり、「癒し」の作品なのです。時代が変わっても、癒されたい、自分は大丈夫と思いたい、そう願う気持ちは変わらない。それがこの作品の醍醐味ではないか。

作品の登場人物のように疲れた時には、まず生きていることに感謝し、下方社会的比較して自信を取り戻しましょう。

…とはいえ、下方社会的比較は度が過ぎると、向上心を無くし、無気力になり、内名木さんのようになってしまうので程ほどに…。

ホ~ッホッホッホッホッ!!

 

Amazonプライム会員ならAmazonvideoで現在無料で視聴可能です。視聴してみてはいかがでしょうか?

笑ゥせぇるすまん「レンタル彼女」より ~なぜ一つのことに執心してしまうのか~

今回は「なぜ一つのことに執心してしまうのか」です。それぞれの話の登場人物は、仕事にプライベートに充実…とはいかず、何か一つのことに熱中、依存している人が多いです。そこに喪黒は目をつけ、よりその一つの世界にどっぷりハマらせていきます。では、そういった人はどうすれば喪黒の魔の手から逃れられたのか。それをアニメ62話「レンタル彼女」の例にして説明します。

【あらすじ】

常仁(25)は、食事に誘える女の子が一人もいないことに嘆く。喪黒が「レンタル彼女」として、女の子を紹介する。ところが、会うのは一回きりという約束に常仁は納得できず…。

 

この話のポイントはズバリ、

「なぜ常仁はそこまでして彼女に会いたいのか」

です。

なぜなら、彼の心理の傾向を探り、分析し、別の考え方を伝えるだけで結果は必ず変わったからです。

 

まず、彼は「デートに誘う女の子がいない自分」に自信をなくしています。若い孤独な男性は、こういった考えをしがちです。しかし、女の子がいることだけが男性にとっての幸福だろうか。世の中には離婚調停の最中の人や、互いにいがみ合って破局寸前のカップルだっています。そういったケースを考えず、恋人というものを美化し、幸福の絶対条件のように考える彼の心は、危うさを孕んでいます。

そこに喪黒がやって来て、彼の話に耳を傾け信頼し、レンタル彼女を紹介します。漫画版ではここで彼に対し

「(彼女がいないのは)それだけあなたは勉強や仕事にうちこんだことの証明ですから…」と、彼をホメます。ここの台詞個人的にとても好きです。この台詞で彼は喪黒を信用したのかもしれません。

そして、絶世の美女を紹介されて、常仁は寝ても覚めても彼女のことばかり…。これは至極当然の成り行きです。だって、恋人の存在を人生の中の最大級の価値と捉えていた彼に、レンタルとはいえ最高の恋人と一時過ごすことができたのですから。

 

では、どうすれば魔の手から逃れられたか。それは「人生の楽しみ」を日頃多く持つことです。

あるカウンセリングに博識な方がこう言っていました。

「ある日、視力を失うかもしれない。自由に動き回ることができなくなるかもしれない。そんな時のために、五感それぞれで楽しめるもの。癒されるものを見つけて、持つことは、人生の力になる」

常仁がもし、様々な方法で人生を楽しんでいたなら、同僚に女友達がいないことをからかわれる位、何ともなかったことでしょうし、喪黒に付け込まれることもなかったでしょう。

それでも恋人が最大の価値ならば、レンタルビデオ屋に寄る足で、100人の女の子と出会い、告白すればよいです。「幸福論」で有名なアランは

「幸福は降ってくるものでも、 与えられるものでもない。 自分でつくるものなんだ」と言っています。

 

まとめますと、

①幸福の条件は1つだけではない

②待つのではなく行動する

一つの物事にとことん打ち込むのは素晴らしいことでもありますが、心の健康のためには、広い視野を持ちましょう!

 

ちなみに2017年現在、「恋人代行サービス」として、「レンタル彼女」は実際に存在しています。A先生の先見の明がすごい…。

 

Amazonプライム会員ならAmazonvideoで現在無料で視聴可能です。視聴してみてはいかがでしょうか?

 

笑ゥせぇるすまん「たのもしい顔」より ~なぜ成功している人が堕ちるのか~

前回は、約束を破るメカニズムを記しました。

今回は「なぜ成功している人が堕ちるのか」です。それぞれの話の登場人物は、それなりに生活水準が安定している人が多いです。家庭があったり立派な仕事があったり、仕事でも重役ポジションだったり…しかし、喪黒の誘惑に乗ってしまいます。何故なのか。それをアニメ1話「たのもしい顔」の例にして説明します。

【あらすじ】

頼母(41)は、幸せな家庭に部長職。一見、成功した人生を歩んでいるように見える。しかし、周囲の期待の目に一日中応える暮らしに、ついに限界が…。

この話のポイントは、

1.なぜ頼母が幸せそうに見えないのか

2.なぜ喪黒に最後、委ねてしまったのか

この2点です。

まず「幸せそうに見えない」のは、頼母が、自分の本心で生きていないからです。周囲と比較して「頼もしい顔をしている」ということで、頼もしい人を演じ続けてきた頼母の人格や人生は、周りによって作られたと言えます。家族にすら弱い自分を晒せないのは大変な心労でしょう。

加えて、裕福な立場にいることと幸福度は実は比例しません。心理学専門のダニエル・カーネマン教授は、年収が780万を超えると収入の増加による幸福度が増えないことを発表しています。

次に「なぜ喪黒に委ねたか」は、選択肢が、心の拠り所が喪黒しかいなかったからと思います。会社でキレた後、一人でバーに行きますが、ここで打ち明け話の出来る友人や身内がいれば、喪黒に頼らなかったでしょう。

また、成功者の中には「これまで自分一人で困難を解決してきた」ということを信念に持っている人もいます。最後に酔った状態ですがるように喪黒に連絡しますが、酒の力を借りての、最終手段だったと推察できます。

喪黒によって「甘えたい」という願いは叶いますが、おそらく多くのものを失ったでしょう。我々はこうした0か100ではなく、バランスよく心の健康を保つ方法を考えましょう。

例えば、自分のことを誰も知らない場所で、一人の時間を作ることはとても有効です。人は周囲と自分を比較して、自己形成をするように出来ています。これを「社会的比較理論」といいます。芥川賞を受賞した「コンビニ人間」で、主人公は店長や同僚と、口ぶりや服装が似てきます。これも社会的比較理論で説明できます。しかし、度が過ぎると自分の人生を生きなくなります。「SNS疲れ」も同じです。

ネットでつながりやすい世の中だからこそ、一人旅や少し遠くのカフェなどで、自分の時間を作ることを強くおススメします。

Amazonプライム会員ならAmazonvideoで現在無料で視聴可能です。視聴してみてはいかがでしょうか?

笑ゥせぇるすまん「老顔若体」より ~なぜ約束を破ってしまうのか~

藤子不二雄A先生の作品「笑ぅせぇるすまん」は、

セールスマンの喪黒福造が「心のスキマ」と称する人間の心の歪みに迫るショートストーリーです。30年近く前の作品ながら、現代にも通じる考え方が随所に見られます。

よって、作中の言動から「どうすれば破滅を免れるのか」を、心理学や教育者の視点で分析・解説します。

今回は「なぜ約束を破ってしまうのか」です。“喪黒が提示した約束を破り、破滅する”というパターンはよく出てきます。それは喪黒が本気で約束を守らせるつもりがないからです。それをアニメ53話「老顔若体」の例にして説明します。

【あらすじ】

顔の若さが自慢の出雲(73)の悩みは、肉体が年相応に衰えていること。喪黒が与えた特製鉄アレイで念願の肉体になったが、喪黒の忠告を破ってしまい・・・。

 

喪黒は「ほどほどに」「若い女の子にハッスルしないで」とだけ忠告しました。しかし、本気で警告するならばこれでは弱いです(絶対わざとです)。

例えば全力で止めるなら

①約束を破ったらどうなるかを明確に伝える

…約束を破った出雲は急激に衰え、見るも堪えない姿に成り果てます。もし彼がここまでの代償を払わなければいけないと知っていたら、結果は変わっていたかもしれません。

②間違いをしないよう、具体的な指示を出す

…約束を破る可能性がある場所や行動をさせない工夫をします。出雲はスナックを訪れ、女性と一夜を過ごしました。リスクの高い場所に、力ずくでも行かせないという手段もあったはずです。

教育にも応用できます。「勉強しなさい」と言うのは簡単です。しかし、その効果が薄いかほとんどないのは「笑ゥせぇるすまん」が証明しています。子どもの勉強を横で見たり、勉強の時間を管理したりするといった、行動に移すだけでも効果は変わるとされています※1

具体的な指示で、正しい行動に導くことは周囲を幸福にします。ぜひ心に留めてみて下さい。

 

Amazonプライム会員ならAmazonvideoで現在無料で視聴可能です。視聴してみてはいかがでしょうか?

 

※1 学力の経済学(中室牧子 著)より