新海作品の魅力 ~「ほしのこえ」から変わらず伝えたいもの~

ここまで「君の名は。」を中心に、作品の魅力や考察に迫りました。今回はそれら「新海作品」の根底にある、普遍的なテーマを探っていきます。全ての作品に共通するテーマは何か。

【風景のこだわり】

他のアニメ映画との比較でよく挙げられるのは、映像の美しさです。「君の名は。」や「秒速5センチメートル」では、そこに聖地巡礼として訪れるファンが多く、そのことからも映像が持つパワーを感じます。

加えて、特定の場所以外にも、時間や季節から切り取った風景も作品を彩っています。例えば「空」です。

「雲のむこう、約束の場所」では青空を割くように飛ぶ白い飛行機という構図。「言の葉の庭」では変化の激しい梅雨空。「君の名は。」ではカタワレ時がそうです。

こうした「空」への思いは「ほしのこえ」にてすでに表現されています。美加子と昇の2人で自転車に乗りながら夕焼け空を見上げるシーンがあります。ここはカタワレ時の原点かもしれませんね。

さらに言うなら、昇が「思いが、距離や時間を越えることだって、あるかもしれない」というセリフがあります。このセリフが実現したのが「君の名は。」です。新海監督が、初心を大事にしていることが伝わってきます。

【日常を愛おしむ】

空の他にも、新海作品では日常あるものが美しく見せています。

「ほしのこえ」では、美加子が「昇くんとまた二人で、コンビニでアイス食べたい」と願いました。宇宙船に乗って、色々見たり感じたりした美加子が願うのは、昇との日常でした。

「雲のむこう、約束の場所」では、佐由理と交わした遠い約束を叶えるべく、物語が動き始めました。浩紀と拓也は3人で過ごした日々、日常が離れずに心に留まっていたからです。

「秒速5センチメートル」ほど、日常のを綺麗に綴った作品はありません。この作品に特別な要素はなく、大なり小なり視聴者にも通ずる体験があることを題材にしています。

「星を追うこども」は、非日常な舞台や出来事が多い作品です。しかし、だからこそ田舎町の日常や風景、人物の心理描写がリアルです。

「言の葉の庭」は、「雨の日だけの特別な逢瀬」というのは特別感がありますが、雨降りの新宿御苑というのは別段特殊な状況ではありません。それでも雨が嵐が、雨上がりの空が、作品に表情をつけています。

「君の名は。」の見どころは、彗星落下直前かもしれません。しかし、瀧と三葉が互いを恋愛対象として意識し出したのは、入れ替わりの日々―。「前前前夜」が鳴り響くあのシーンです。

【まとめ】

「情感あふれる風景は、どのようにして作られるのですか」という質問に新海さんはこう答えています。

「何か特別な風景を探しているわけではない。秒速5センチメートルの舞台が参宮橋なのも、当時その近くに住んでいたというだけ」

いくらでも空想やファンタジーを描くことも出来るアニメ映画において、新海さんのこだわりを感じる発言でした。ぜひ新海作品を視聴する際は、日常は光で満ちていることを感じてほしいと思います。

「君の名は。」と性格

風景のリアリティや切なさ等、魅力盛りだくさんの「君の名は。」。このサイトにて、これまで様々な切り口で作品の魅力を伝えてきました。今回は、瀧と三葉の人物像に迫ります。言動等を元に、二人の性格や深層心理を探っていきます。

【瀧】

瀧の人となりは、三葉と入れ替わっている時によく表れています。奥寺先輩が言っていた「喧嘩っ早い」は、机を蹴飛ばすシーンや、町長の胸ぐらを掴むシーンで明らかになっています。この「喧嘩っ早い」はプラスに考えると、「行動力がある」という見方もできます。彼の持ち前の行動力は、糸守での日々でいかんなく発揮されています。

例えば、「カフェなんてない」とあきらめムードだった空気の中、ノコギリで木を切って、即席のカフェを作る。体育の授業でイキイキとバスケをする(生徒の反応からして、三葉は体育で活発に動くタイプではなかったと思われる)。そうした行動から見て取れます。

記憶の絵を頼りに岐阜まで行く等、とどまることを知らない瀧の行動力に学ぶことも多いです。しかし、奥寺先輩へのアピールにその行動力は発揮せず…。

 

【三葉】

三葉の気持ちの変化を見ていると、「性格」は変えられる!と思います。入れ替わりが起こる前の三葉は暗い影を背負っていました。瀧からメールで「もっと堂々としろ」と書かれていましたが、男女ともに好かれる三葉(in瀧)から分かるように、元々魅力のある子だったのです。

三葉は瀧に感化されます。その結果、一人で東京に向かうという行動に移します。

奥寺先輩が「瀧くんは誰かと出会って、その子が瀧くんを変えたのよ」と言いましたが、三葉に対しても同じことが言えます。入れ替わりの日々の中、東京や新しい男の子の友人、奥寺先輩との出会いが、彼女に勇気を与えたのだと思います。

 

【まとめ】

「性格」とは生まれ持ったものではなく、「行動」が「性格」になります。そして、人との出会いが良い結果をもたらすことが往々にしてあることを、「君の名は。」は伝えています。貴方はどの登場人物に心を揺り動かされましたか?

「君の名は。」と仕草

前回記事にて、「君の名は。」の魅力の一つに、リアリティなところと書きました。風景のみならず。涙に着眼点を置いても、リアルを追求していました。

今回も同じように、あるものに注目します。今回は「仕草」です。

「仕草」の中でも「男女の仕草の違い」を見ていきます。言うまでもなく、「君の名は。」は瀧と三葉、入れ替わった二人の男女の物語です。故に作中で男性らしい、女性らしい仕草がいくつか見受けられます。それらを紹介していきます。

◆男性的仕草「瀧」

まずは瀧の仕草から見ていきます。分かりやすいものが、隕石から糸守町を守ろうと、テレビの前に決意を固めている時です。腰に手を当てて堂々と立っている様は、三葉にはない仕草です。

他にも、坂道を走るシーンが、瀧本人と三葉に入れ替わっている時の瀧でそれぞれあります。比較してみると違いは明らかなので、声でも行動でもない性差が見えてくる興味深いシーンです。

◆女性的仕草「三葉」

次に三葉の仕草です。ここでは入れ替わった時のとあるシーンを抜粋します。入れ替わりのルールをお互いのスマホに残すシーンで、瀧(in三葉)は電車の中でスマホを操作しています。この時の足に注目。足を閉じて若干交差させています。

この仕草は大変女性的な仕草です。交差、すなわちクロスさせる仕草です。逆の仕草は大きく足を広げて座るになりますが、この仕草は偉そうなオッサンがする仕草です。

クロスの技法は臨機応変に使えます。カフェで、左にある飲み物を右手で取ったり、足を組み変えたり、逆方向やクロスを意識することで、異性への自然なアピールとなります。女性を意識してほしい相手と接する際、こうした「モテ仕草」を知っておくといいでしょう。

◆女性的仕草「奥寺先輩」

最後に奥寺先輩です。流石はアイドル的人気の奥寺先輩です。上記の「モテ仕草」を自然に行っています。瀧との初デートの際、向かい合っている瀧の右手を、奥寺先輩は右手でつかみます。ここに「クロスの法則」が発動しています。

また、クロスではない場面で、岐阜に訪れた時、ラーメンを食べる奥寺先輩が、髪をかき上げて食べていますよね。この仕草、実は「モテ仕草」です。足もそうですが、髪も女性らしさが出る体の部位なので、男性はドキッとしやすいとされています。髪をかき上げる他に、髪を結ぶ、おろすといった仕草も男性は弱いです。

いかがでしょうか。「君の名は。」の登場人物から、仕草の重要性を知っていただければと思います。

「君の名は。」と涙

「君の名は。」には数々の名シーンがありますね。手のひらに書かれた「すきだ」を見て、駆け出す三葉。神社に続く階段で再会する二人…涙なくして語れないシーンです。

この記事ではそんな「涙」に注目してみます。瀧と三葉は別に泣き虫なわけではありません。故に二人が涙を流す場面は印象に残ります。そういったシーンから「涙」について考えていきます。

◆「涙」のシーン◆

では、劇中で瀧と三葉が涙を流したシーンを振り返ります。

①入れ替わった瀧が、口噛み酒を奉納した後、目覚めた時(瀧)

②瀧と奥寺先輩のデートについて思いを巡らしている時(三葉)

③瀧が口噛み酒を飲んで再び三葉と入れ替われた時(瀧)

④カタワレ時の山頂で、瀧と出会えた時(三葉)

⑤三葉との出会いの後、瀧が三葉の名前を思い出せない時(瀧)

⑥テッシーと共に町民に避難を呼び掛けている時(三葉)

⑦手のひらに書かれていた「すきだ」の文字を見た時(三葉)

⑧長い階段で二人が言葉を交わした時(瀧・三葉)

◆三種類の涙◆

涙には三種類の涙があります。「嬉しい涙」「苦しい涙」「無意識の涙」です。

先述したシーンはそれぞれ

「嬉しい涙」…③④⑦⑧

「苦しい涙」…⑤⑥

「無意識の涙」…①②

に分類できます。

そして、この三種類の涙の内、「嬉しい涙」と「無意識の涙」は目尻から、「苦しい涙」は目頭から流れやすいです。

理由としては、嬉しい涙や無意識の涙を流す時は、顔は正面を向いているか上を向いているかです。よって涙はより低い位置にある目尻に向かいます。一方、苦しい涙は、眉間にしわが寄っていたり、うつむいていたりすることから、涙が目頭に向かいます。

もちろん例外もあります。③は嬉しすぎて表情がぐちゃぐちゃになっているので目頭からも涙が溢れています。ただ、⑤や⑧の涙の流れ方はとても自然です。悲しい時や嬉しい時の涙はこうなるということをわかって描いてあると思いました。アマチュアの絵師の中には、目と同じ大きさの涙を書くような人もいます。一つの表現の形かもしれませんが、新海誠作品は「リアリティ」が一つの特長なので、こうした細かいところの配慮も、丁寧な仕事ぶりが見て取れました。

秒速5センチメートルはBADENDなのか

新海誠監督の長編アニメ作品の3作目「秒速5センチメートル」。

初恋の二人が結ばれずにすれ違って終わることから、「バッドエンド」だという声もあります。その意見について考えていきます。

そもそも「結ばれる」でなければハッピーエンドとはいえないのでしょうか。

ラストシーンでタカキは、踏切を渡った後にアカリの存在が未だ強く心の中にあることを再認識します。そして強い視線を前に向けます。「君の名は。」で「すきだ」の文字を見た後の三葉のように、強い目です。

「初恋の素敵な記憶と共に生きる」

これは一つのハッピーエンドともいえます。

ではもし、タカキとアカリが結ばれ、初恋の相手同士で夫婦となったらどうなっていたでしょう。もちろんファンとしてはずっと幸せな二人でいることを願います。

しかし、生活を共にすることで、もしかしたら相手の嫌な一面ばかり見るようになってしまったり、当時とは違う感情、それも好ましくない感情が互いに芽生えてしまったりするかもしれません。

描写こそありませんが、アカリもタカキのことを強く愛おしく思ったままだと思います。そう考えると、素敵な初恋がそのまま壊れずそこにあり続けることは、十分幸福なのではないでしょうか。

ちなみに、初恋の相手と結婚するというケースはどれくらいあるのか。「初恋の人との現在の関係はどうなっているか」を20代~50代の人を対象に、ライフネット生命保険が調査しました。

結果、「配偶者・婚約者」と答えた人の割合は1%でした。初恋の人と結ばれる確率は100人に1人というデータでした。初恋が結婚までつながることは稀なケースであるとわかりました。物語の中で現実のデータを出すのは野暮かもしれませんが、初恋同士が結婚までいかなかったことで二人を責めたり嘆いたりすることはないと思います。

加えて「思い出に残っている人(どこで何をしているか知らない)」と回答した人は84%という結果でした。その中には苦い思い出のままの人もいると考えると、タカキやアカリ、少なくともタカキの心に光が差し込んだラストは、ハッピーエンドだと私は思います。

「君の名は。」徹底考察!⑤~「君の名は。」は新海誠BEST~

2016年夏に上映されたアニメ映画「君の名は。」。

評判が良く、2018年1月に地上波でも放送され、今なお多くの人に愛されている作品です。

その「君の名は。」を様々な視点で考察したり、マニアックな小ネタを紹介したりしていきます。

今回は、「君の名は。」以外の新海作品を視聴済みの方向けの記事です。「君の名は。」以前からの新海作品ファンは、「君の名は。」のハッピーエンドっぷりに驚いたそうです。「好きな作品だけど、ちょっと違うかなぁ」という声もあります。ただ、私の感想は違います。「君の名は。」は「新海誠BEST」で、これまでの集大成的作品だと思います。これまでの作品をふまえて、その理由を述べていきます。

【ほしのこえ】

 新海誠の名が世に出て、著名なアニメーターが衝撃を受けたとされる作品です。この時点から、離れ離れになった男女の切なさ、風景描写のこだわり等、新海作品の「核」となるものが顕在しています。「原点にして頂点」と評するファンが多いのも頷けます。無論、「君の名は。」にもこれらの手法が使われています。

【雲のむこう、約束の場所】

 「新海作品の分水嶺」だと私はこの作品をとらえています。「ほしのこえ」の核をより昇華させたものになっています。特に、浩紀の、佐由里のバイオリンを聞いて、自分も弾けるようにしたり、決心したら北海道まで行ったりと、正解かどうか分からずとももがく、動くといった様子は瀧とかぶります。「君の名は。」の登場人物のイキイキとした姿は、一朝一夕で出来上がったものではないのだと感じ取ることができます。

【秒速5センチメートル】

 本来の「君の名は。」のプロットは、「秒速5センチメートル」のように「二人をすれ違いさせる」予定でした。そこをプロデューサーの川村元気が、今の結末に変更したそうです。しかし、だからといって「秒速5センチメートル」の要素がないわけではありません。ラストに近いシーン、雪の降る東京ですれ違う瀧と三葉。このシーンは非常に「新海誠的」といえます。往年のファンは、ここですれ違って終わってもキレイだったと評しています。「秒速5センチメートル」で一つの高みに達した「切なさ」の表現。ここの切なさがあったから、ラストで巡り合えた喜びが倍増しています。結末だけを見ると毛色の違う二つの作品ですが、「心の葛藤を描く」という意味では、共通し、かつ深化させたといえます。

【星を追う子ども】

 「田舎の雄大さ、自然への畏怖」がテーマにあると思います。「さよならを知るための旅だ」というセリフもあり、生死についてがメインテーマとされていますが、人智を越えた存在が現れる等、大きなスケールで描かれている作品ともいえます。ファンタジーであり、自然や人ならざるものをダイナミックに描いたことで、「君の名は。」の片田舎の風景や、彗星の落下にリアリティを与えることに成功したのではと思います。

【言の葉の庭】

 もとより新海作品は風景描写が高く評価されていました。「星を追う子ども」で壮大な風景を描きましたが、そこから一転、日本の、さらに新宿御苑とその周囲という極めて限定的な世界を描いたのが「言の葉の庭」です。特別な風景ではない分、雨の日、晴れの日、雷、雨上がりの空…。天候が登場人物の心情を何よりも表現していました。こうした表現技法は「君の名は。」にも使われています。散々だったデートの終わりの空、初めての入れ替わりで三葉が見た東京の景色―。また、登場人物そのものや、登場人物をモチーフにしたキャラクターが登場していることから、新海監督の思い入れの強い作品ともいえます。

【クロスロード】

 「遠く離れたまだ知らない人と出会う」「片方は田舎、片方は都会」と、かなり「君の名は。」に近い設定のショートアニメです。この作品の反響が大きかったことが、「君の名は。」は成功するだろうとGOサインが出たことにつながったのかもしれません。

 いかがでしょうか。以上のことから、「君の名は。」はこれまでの新海作品のエッセンスが凝縮された「新海誠BEST」といえます。これまでの作品と連動して「君の名は。」を楽しむと、また新しい発見がありますよ。

「君の名は。」徹底考察!④~君の名は。小ネタ集~

2016夏に上映されたアニメ映画「君の名は。」。

評判が良く、2018年1月地上波でも放送され、今なお多くの人に愛されている作品です。

その「君の名は。」を様々な視点で考察したり、マニアックな小ネタを紹介したりしていきます。

毎週1回、「君の名は。」の新しい発見を読者に届けていきたいと思います。

 今回は「君の名は。」を少しマニアックな視点で観察してみました。すると興味深いシーンがいくつか出てきましたので紹介します。

【デート慣れしてない瀧】

瀧と奥寺先輩のデート、不慣れで動きがぎこちない瀧と、ドキドキしてはいるだろうが大人の余裕を見せている奥寺先輩の様子がそこにはありました。その不慣れな瀧の様子がわかる一面です。

奥寺先輩がランチの時間で楽し気に瀧に話しかける場面です。瀧の皿は完食済みなのに対して、奥寺先輩の皿はまだ半分残っています。

 瀧が会話が続かないことから、もうとにかく食べて間をつなげるしかないといったところでしょう。「君の名は。」に限った話ではありませんが、新海作品は、こうした何気ない一枚、一つの道具に、状況を語らせる演出に秀でています。

【ちょっとエッチな君の名は。】

 全年齢で楽しめる「君の名は。」ですが、一瞬だけエッチなシーンがあります。それは糸守近くの民宿で3人が宿泊したその朝です。奥寺先輩が朝目覚めた時、浴衣の胸元が少しはだけています。その時一瞬だけ彼女の下着が見えます。黒い下着で大人の雰囲気満載でした。

【三葉父と宮水家】

 三葉と入れ替わった瀧が、父親である町長に、彗星が落ちるから避難させるように嘆願する場面です。その時に父親はこうつぶやきました。「妄言は宮水の血筋か…」と。この一言から、宮水家の人間の考え方が見えてきます。一葉(おばあちゃん)は、糸守の伝統に重きを置く語り部のような一面があります。スピリチュアル寄りな人物ともいえます。二葉も、入れ替わりを経験していたと分かり、夫にもそうした話はしていたのではと推察できます。一方父親は、政治の道を歩み、リアリスティック寄りな人物だといえます。父親からしたら、三代に渡って現実離れな話を聞かされたうんざりしていたのでしょう。

【役場の放送担当】

 放送ジャックしたさやちんの後、正式に役場から放送をするシーンがあります。この時、町長の隣にいる女性、実はさやちんのお母さんです。小説版で、さやちんの口から「うちは母子姉妹代々町内放送担当だもん」と出る場面があります。

【婚約指輪】

 ラストの奥寺先輩と瀧くんとのやり取りで、左手に婚約指輪が見えたところは印象的でしたね。そこで気になるのは奥寺先輩とゴールインした相手です。その相手は劇中にいます。

 瀧と高木、司の三人で就活中のトークをしているシーン。そこの司の左手に注目してください。彼の指にも指輪があります。そう、奥寺先輩のお相手は司です。そういえば岐阜で二人とても仲良くしていましたね。

いかがでしたか。

次回最終回のテーマは「新海誠BESTとしての君の名は。」です。

「君の名は。」徹底考察!③~糸守町Before & After~

2016夏に上映されたアニメ映画「君の名は。」。

評判が良く、2018年1月地上波でも放送が決まり、今なお多くの人に愛されている作品です。

その「君の名は。」を様々な視点で考察したり、マニアックな小ネタを紹介したりしていきます。

毎週1回、「君の名は。」の新しい発見を読者に届けていきたいと思います。

今回のテーマは「糸守町Before & After」です。テーマの通り、糸守町の面々に焦点を当てていきます。飛騨高山の雄大な自然とは裏腹に、三葉にテッシー、さやちんといった物語の主要人物は、序盤、どこか暗い影を残して生活しているように見えます。

今回は彼らの心境が、三葉の入れ替わり、彗星の事件の前後でどう変わっていったかを分析します。

1.さやちんの場合

 三葉の親友である彼女は、大人しい子で影が薄い子でもありました。物語冒頭で「町長と土建屋はその子どもも仲良しか」とテッシーと三葉が揶揄された時、さやちんの存在はまるで空気でした。テッシーや三葉とは本音で語れることから、親しくなるととても良い友人関係は築けると思います。ただ、自ら目立つ行動はしない性格でした。

 変化がはっきり見て取れるのは、放送ジャック後、彗星が割れた時です。町役場の職員に、彗星が割れていることを訴えかけます。音声こそありませんが、必死の剣幕です。目立つことを避け、現実的なさやちんが、親友を信じ、勢いで突っ走りました。その後、テッシーや三葉との関係や、さやちんの人生観は大きく飛躍したことと思います。

2.テッシーの場合

 テッシーは三葉と境遇が似ています。町内における父親の影響力が強く、テッシーそのものをあまり見られていないのではと思います。交友関係も、作中でテッシーが同姓の友人と絡むシーンもなく、孤立しています。本音で話せる相手でないと疲れるから、距離を置いているのかもしれません。

 象徴的なシーンは、テッシーが宮水神社の方を見て「たまらんなぁ。お互い」とつぶやくシーンです。自分ひとりの力ではどうしようもないものに振り回されるテッシーも、三葉のように「来世は~」と思っていても不思議ではないと思います。

 変化は、三葉の入れ替わりから段々と出てきました。中身が瀧の三葉がノコギリで木を切って即席カフェを作る場面がありましたが、それまでのテッシーにはない発想だったことでしょう。「カフェなんかあるか」「将来もこのまま変わらん」とあきらめ癖が身に染みているからです。しかし、本心は現状を打破したい―。変電所の爆破前後でとてもノリノリになっていたのは、その感情があふれ出てきたからです。

 そしてテッシーはさやちんと共に東京に行き、結婚します。テッシーの未来が良き方向に導かれたといえます。

3.三葉の場合

 三葉はテッシー以上に難しい立場です。ただでさえ狭い町で、町中の人が知り合いになる中、さらに町長の子という視線を感じながら生きてきたことが推察できます。同時に序盤にかけて、クラスで感じ悪く言われるように、コミュニケーションも円滑に取れているとは言い難いです。三葉のような可愛い子が、自身のスペックをいかせずなぜ青春を謳歌できずにいたのか。

 その原因に、家庭内不和が関係していると私は思います。作中の回想シーンで、おばあちゃんと父親が言い合いになっているところを三葉が聞いていて、耳をふさぐシーンがありました。「人が怖い」というのを深く心に刻み込んでしまうと、人付き合いに恐怖が生まれ、対人恐怖症になるとされています。ましてや、おばあちゃんも父親も、三葉に優しい面を見せているからこそ、怖い姿と優しい姿のどちらが本当の姿か混乱してしまいます。このような状態を「ダブルバインド(二重拘束)」といい、子どもの精神の発達に影響が生じます。妹の四葉の方が大人らしいという描写も小説にはありますが、「三葉が子供らしい」の方が適切かもしれません。

 変化のきっかけは、瀧との入れ替わりです。行動派の瀧のライフスタイルが三葉に反映された結果、ラブレターをもらったり、男子の注目の的になったりしたことで、自分の可能性が広がった、自分に自信が持てるようになったと推測できます。そして三葉の中に、愛情が芽生え、瀧と同様に確信を持って行動に移せるようになりました。

いかがでしたでしょうか。次回のテーマは「君の名は。小ネタ集」です。

「君の名は。」徹底考察!② ~パーフェクト美女、奥寺先輩の魅力を探る~

2016年夏に上映されたアニメ映画「君の名は。」

評判が良く、2018年1月に地上波でも放送が決まり、今なお多くの人に愛されている作品です。

その「君の名は。」を30回は少なくとも視聴した私が、様々な視点で考察したり、マニアックな小ネタ・見どころを紹介したりしていきます。毎週1回、「君の名は。」の新しい発見を読者の皆様に届けていきたいと思います。

第2回は、瀧が片想いしたバイト先のマドンナ、奥寺先輩についてです。彼女もヒロインかというほどのハイスペックな一面を色々紹介します。

1.映画版で伝わる、彼女の恋の本気度

小説版の方では、奥寺先輩のスペックの高さが存分に書かれています。三葉視点では、彼女の笑顔に対して「今日東京で見たもので一番尊い最強の笑顔」と評し、瀧視点では「アイドルみたいな女優みたいなミス日本みたいな」と評されています。一方、映画版では彼女の内面の魅力が見えてきます。

例えば、民宿でタバコを吸いながら司と話すシーンは映画版のみです。そこで「好きだったんだ、瀧くんのこと」と過去形で話します。瀧が嫌がるかなと思って禁煙していたと思うと、本気で瀧が好きだったんだと伝わります。

2.相手を立てる、思いやれる

とはいえ瀧に執着するわけでもありません。瀧の心が違うところにあると分かるやいなや、瀧への対応は恋人のそれではなくなります。岐阜へ向かう新幹線で瀧に微笑む様子は母親みたいです。そして最後に、瀧に「君もいつか、ちゃんと幸せになりなさい」と、婚約指輪をはめた手で別れの挨拶をします(小説版ではレストラン内でのセリフ)。自分の幸せだけでなく、相手の幸せを心から願える奥寺先輩は、素敵な人だと思います。

他にも「来ちゃった」や、ゆるキャラの前で「かわいいー♡」と足をバタバタさせる仕草など、美人の奥寺先輩のかわいい行動というギャップも男心をくすぐります。結論、外面も内面もパーフェクト美女だということです。

いかがでしたでしょうか。シナリオや風景がピックアップされやすい新海誠作品ですが、キャラクターの設定も掘り下げると、魅力が再発見されますよ。

次回のテーマは「糸守町Before&After」です。

「君の名は。」徹底考察!① ~なぜ二人は恋に落ちてたのか~

2016年夏に上映されたアニメ映画「君の名は。」

評判が良く、2018年1月に地上波でも放送が決まり、今なお多くの人に愛されている作品です。

その「君の名は。」を30回は少なくとも視聴した私が、様々な視点で考察したり、マニアックな小ネタ・見どころを紹介したりしていきます。毎週1回、「君の名は。」の新しい発見を読者の皆様に届けていきたいと思います。

第1回は、「なぜ、瀧と三葉は恋に落ちていたのか」です。

彗星が落ちる間際に、手のひらに書かれた「すきだ」の文字を見るシーンは、とても胸を打たれる名場面ですね。しかし、あの場面以外に、明確に恋心を伝えるシーンはなく、いつ恋愛感情が芽生えたかが、視聴者の中にはピンとこなかった人もいるようです。そこで、今回は二人が恋に落ちていった、3つのステップを考えていきたいと思います。

1.性差を意識せざるを得ない状況だったこと

二人が入れ替わりをして、すぐ意識したのはお互いの体でした。特に三葉は、入れ替わりをくり返ししていく中で、しっかりした寝間着を着ることで警戒しました。ただ、年頃の若い二人は、禁止事項やお互いのことを気にはしながらも、異性の体に興味津々でした。男女として気を付けなければいけないあれこれを考えて生活していたわけです。友人としてより、気にかける異性として最初から見ていたと言えます。

2.二人が恋愛に対してうぶでピュアだったこと

二人は異性に対して全く免疫なしといった様子でした。例えば瀧は、奥寺先輩とのデートは初デートで右往左往。三葉も、司の顔が至近距離に来た時と、高木の笑顔で東京の男子のスマートさに惚れ惚れ。友人も入れ替わった相手も、今まで接してきた同級生らとは違う体験でドキドキしっぱなしだったでしょう。「つり橋効果」に似たような特別な環境、シンデレラやラノベの異世界転生みたいな気分で、恋に大胆になれたのかもしれません。

3.お互いが自身のスペックの高さに気づいたこと

物語の最初、「こんな町いややー」と嘆く三葉。現状を打破できずに暗い様子を見せていました。瀧も奥寺先輩を想いながらも、それまで行動に移せなかった。二人に共通していたのは「自信のなさ」でした。しかし、入れ替わったことで、瀧は自分が奥寺先輩とデートできる力があること、三葉は男子にも女子にも告白される魅力があることが分かります。「何やらかしてんの!?」とお互い驚きますが、本心は悪い気持ちじゃなかったと思います。恋のドラマが両者に起きたことで、意識が向いた可能性があります。

いかがでしたでしょうか。次回日曜日に更新します。次回のテーマは「パーフェクト美女、奥寺先輩の魅力を探る!」です。

それでは、また。