「君の名は。」徹底考察!③~糸守町Before & After~

2016夏に上映されたアニメ映画「君の名は。」。

評判が良く、2018年1月地上波でも放送が決まり、今なお多くの人に愛されている作品です。

その「君の名は。」を様々な視点で考察したり、マニアックな小ネタを紹介したりしていきます。

毎週1回、「君の名は。」の新しい発見を読者に届けていきたいと思います。

今回のテーマは「糸守町Before & After」です。テーマの通り、糸守町の面々に焦点を当てていきます。飛騨高山の雄大な自然とは裏腹に、三葉にテッシー、さやちんといった物語の主要人物は、序盤、どこか暗い影を残して生活しているように見えます。

今回は彼らの心境が、三葉の入れ替わり、彗星の事件の前後でどう変わっていったかを分析します。

1.さやちんの場合

 三葉の親友である彼女は、大人しい子で影が薄い子でもありました。物語冒頭で「町長と土建屋はその子どもも仲良しか」とテッシーと三葉が揶揄された時、さやちんの存在はまるで空気でした。テッシーや三葉とは本音で語れることから、親しくなるととても良い友人関係は築けると思います。ただ、自ら目立つ行動はしない性格でした。

 変化がはっきり見て取れるのは、放送ジャック後、彗星が割れた時です。町役場の職員に、彗星が割れていることを訴えかけます。音声こそありませんが、必死の剣幕です。目立つことを避け、現実的なさやちんが、親友を信じ、勢いで突っ走りました。その後、テッシーや三葉との関係や、さやちんの人生観は大きく飛躍したことと思います。

2.テッシーの場合

 テッシーは三葉と境遇が似ています。町内における父親の影響力が強く、テッシーそのものをあまり見られていないのではと思います。交友関係も、作中でテッシーが同姓の友人と絡むシーンもなく、孤立しています。本音で話せる相手でないと疲れるから、距離を置いているのかもしれません。

 象徴的なシーンは、テッシーが宮水神社の方を見て「たまらんなぁ。お互い」とつぶやくシーンです。自分ひとりの力ではどうしようもないものに振り回されるテッシーも、三葉のように「来世は~」と思っていても不思議ではないと思います。

 変化は、三葉の入れ替わりから段々と出てきました。中身が瀧の三葉がノコギリで木を切って即席カフェを作る場面がありましたが、それまでのテッシーにはない発想だったことでしょう。「カフェなんかあるか」「将来もこのまま変わらん」とあきらめ癖が身に染みているからです。しかし、本心は現状を打破したい―。変電所の爆破前後でとてもノリノリになっていたのは、その感情があふれ出てきたからです。

 そしてテッシーはさやちんと共に東京に行き、結婚します。テッシーの未来が良き方向に導かれたといえます。

3.三葉の場合

 三葉はテッシー以上に難しい立場です。ただでさえ狭い町で、町中の人が知り合いになる中、さらに町長の子という視線を感じながら生きてきたことが推察できます。同時に序盤にかけて、クラスで感じ悪く言われるように、コミュニケーションも円滑に取れているとは言い難いです。三葉のような可愛い子が、自身のスペックをいかせずなぜ青春を謳歌できずにいたのか。

 その原因に、家庭内不和が関係していると私は思います。作中の回想シーンで、おばあちゃんと父親が言い合いになっているところを三葉が聞いていて、耳をふさぐシーンがありました。「人が怖い」というのを深く心に刻み込んでしまうと、人付き合いに恐怖が生まれ、対人恐怖症になるとされています。ましてや、おばあちゃんも父親も、三葉に優しい面を見せているからこそ、怖い姿と優しい姿のどちらが本当の姿か混乱してしまいます。このような状態を「ダブルバインド(二重拘束)」といい、子どもの精神の発達に影響が生じます。妹の四葉の方が大人らしいという描写も小説にはありますが、「三葉が子供らしい」の方が適切かもしれません。

 変化のきっかけは、瀧との入れ替わりです。行動派の瀧のライフスタイルが三葉に反映された結果、ラブレターをもらったり、男子の注目の的になったりしたことで、自分の可能性が広がった、自分に自信が持てるようになったと推測できます。そして三葉の中に、愛情が芽生え、瀧と同様に確信を持って行動に移せるようになりました。

いかがでしたでしょうか。次回のテーマは「君の名は。小ネタ集」です。

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