大長編ドラえもんに見る現実と非現実と冒険

大長編ドラえもん。映画用に書き上げられた単行本一冊に及ぶ長編である。もちろん作者は藤子F不二雄だ。 作品の特徴として、まずは、ご近所、日常から始まる。それが何かの拍子で非現実と混ざり合う。大抵は、ドラえもんの秘密道具がスタートだが、宇宙からの侵略者だったり、隠された陰謀があって、それが顕在化する事も多い。

様々な意見があるだろうが、大長編ドラえもんの最大の面白さは、現実と非現実が重なる部分だ。それは鉄人兵団で鏡の世界の中、のび太たちがスーパーや本屋、おもちゃ屋を無料で利用する瞬間であったり、”のび太の魔界大冒険”で”もしも電話”を使った次の日の魔法の世界だったりする。そこで、読者は日常から非日常に迷い込む。そして次に待っているのは冒険だ。日常から直接、冒険に入ってしまうと読者はおいていかれてしまう。非日常、しかも夢のような、そういった世界を挟むことによって読者は素直に冒険に旅立てる。しかも巧妙な事に作者は冒険に旅立った後も読者を現実に何度か引き戻す事もある。

”のび太の大魔境”では、ジャングルを旅しながら夜にはどこでもドアで家に帰るという行ったり来たりを演出しているし、”魔界大冒険”でも一度家に戻る。 この演出によってのび太たちの冒険は現実の延長にあるように感じられて、ワクワク、ドキドキ、あるいは恐怖を読者に強く与えうる。 大長編ドラえもんは、いろいろな視点を持てるような大人になってから読むと、更に楽しめる。

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