【レビュー】 柳生十兵衛死す 漫画:石川賢 原作:山田風太郎

 柳生十兵衛が、パラレルワールドから攻めてくる魔人達を、バッタバッタと斬り捨ててゆく荒唐無稽な時代劇である。
 しかも敵の総大将は、徳川家康なのである。原作はあの山田風太郎であるが、石川賢流に大胆アレンジしてしまった。こうしたアレンジでは、夢枕獏の小説を自分流のマンガに変えてしまった、板垣恵介の『餓狼伝』がある。
 未来と江戸時代が同居し、そこに超人・魔人が入り乱れて、戦争さながらの大活劇が始まるのだ。それを石川賢が、例のグログロでド派手なタッチで描くのだから堪らない。
 それにしても柳生十兵衛は、メチャメチャ強い。強いとなると、限りなく強くしてしまうのが石川流である。
 心理描写なんてどこにもない。ただひたすら強いだけなのである。それが永井豪を超えられない理由の一つかもしれないね。
 ストーリーはだんだんエスカレートしてゆき、いよいよ御大・家康の出番かと思わせておいて、いきなり途中で終了してしまった。最近納得いかないまま終了してしまうマンガが多いけれど、このマンガは本当に話の途中で終ってしまったのだ。
 大風呂敷を広げるだけ広げておいて、「あとは知らないよ」はないだろう。出版社の都合なのか、作者の都合なのか知らないが、全く失礼このうえない。読者をバカにするのも、いい加減にしろと言いたい。
 ところがこの作品、ネット上では熱烈な支持を受けている「魔化不思議な幻の作品」なのである。

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