【レビュー】 HUNTER×HUNTER ハンターハンター 作者:冨樫義博

ジャンプで連載

この作品が始まった時、実はそれほど期待をしていませんでした。
冨樫義博氏の前作『レベルE』はかなり面白かったのですが『ハンターハンター』は雰囲気があまりに少年漫画風だったので、「子供向けを描き始めたのかな」と思ってしまいました。
しかし実際にはそんな事はありませんでした。漫画のお約束をうまく壊しながら新しい漫画体験を贅沢に提供してくれる作品で驚きました。
お約束を強く感じさせるために典型的な作品設定(最初はそう見えた)が必要だったのかもしれません。
なにせゴンはなんとなく『ドラゴンボール』の孫悟空を彷彿とさせるわけです。

ハンター試験での壁壊し

勝負の前提であるルールの盲点を付いて問題を解決するというのが、この作品の常套手段だと思います。
そういう意味でハンター試験でのゴンの壁壊しは衝撃的でした。あのシーン以来ぼくの中ではこの作品は注目し続けないといけない作品になりました。
今でこそハンターハンター的に、ちょっとズル(前提ズラシ)して問題解決する作品をよく見るようになりましたがこの作品の影響だと思いますね。

残酷な世界

この作品世界はとにかく無慈悲で残酷です。現実世界の残酷な部分を強調して作品に取り入れているという感じでしょうか。
その残酷さに素直に伸び伸びと対応していく主人公ゴンが逞しくて見ているだけで爽快感があります。陰と陽を上手く見せています。

必要以上にもったいぶらない

最後の敵との対決とか伏線の回収とかを必要以上にもったいぶらないのがこの作品のいいところです。当初からの主人公の目標も現在では叶えられました。

単行本で読めばテンポいい

当作品は2014年3月の時点で32巻まで発売されています。この32巻は非常に濃密です。無駄な引き伸ばしなどなく非常にテンポがいいです。

休載を繰り返す週刊連載

それもそのはず週刊連載では休載を繰り返しています。最近また掲載されていません。
連載が始まってからの休載率は50%くらいでしょうか?
割りと近い時期に始まったワンピースやナルトが60巻を超えてきている事を考えると32巻のこの作品はやっぱり掲載率が半分くらいですね。
ちなみに各開始時期です。

ハンターハンター 1998年14号開始
ワンピース    1997年34号開始
ナルト      1999年43号開始

読者と作者の幸せな関係

とはいえ、毎週連載を実現するために質を落としてほしいとは思いません。よく考えられて練りこまれた話を作るために時間がかかってもいいと思います。
ぼくの個人的な意見ですが「キメラアント編」のような凄いラストを用意するのに休載が必要ならドンドン休んで欲しいですね。
今の質で今のスピードなら十分だと思います。無駄な戦闘を増やしたりすれば休まないで続けられるでしょうが、そんなルーチンワークは読みたくありません。
今、ぼくは読者として幸せです。
作者は一つの作品を10年も20年もかけて描き上げる時代になってきました。一生をかけて描き上げるような場合もあるでしょう。
それならそれで読者としてのぼくも一生かけて読んでいきますから、いいんです。幸せじゃないですか一生読める作品があるなんて。

編集部は大変だろうな

人気漫画が休載すれば雑誌の売れ行きは落ちるし単行本の売上も合計で減ると思います。
そういう意味では会社的には大変なんだと思います。読者にとっては60冊の密度を30冊の価格で読めるわけですからお得ですけどね。

取り敢えず読んでおこう

まだこの作品を読んだことない人は取り敢えず読んでおこう。ワンピース、ナルトとともにジャンプの看板になっているのは伊達じゃないと体感出来るはずです。

 -集英社 「HUNTER×HUNTER」 作者:冨樫義博-