新連載の相撲漫画
今週号の表紙を見たときの感想を率直に言うと、
「ガッカリした」
となります。
相撲漫画はまったく望んでませんでした。面白いはずがないと無意識に感じて、ジャンプを開く気持ちも、ちょっと弱まりましたね。いつもなら、買ってきてすぐに読みはじめるのですが、1日おいちゃいました。
なぜ相撲漫画がダメか
一時期まで、相撲が立ち技格闘技最強という定説がありました。立ち技は立って戦ったら強いですよね。だけど総合格闘技で負けるのは、寝技に持ち込まれるからです。ボクシングも、空手も寝技で負けるのです。でも、総合格闘家も倒さなければ立ち技には勝てません。
そこで、相撲という話になります。倒れない勝負を追求している彼らを倒すことは難しいを通り越してほとんど不可能だろうから、寝技には持ち込めない。寝技で決める総合格闘家は力士には勝てないだろうという説が生まれます。
また、力士は体重制限がありませんね。ほとんどの格闘技で体重制限があるのは、体重の違いが強さに非常に大きく影響し、体重が大きく違えばほとんど試合にならないからです。力士は、体重無制限ですから、みんな非常に大きな体をしていますね。これも力士最強説の根拠となっていました。
しかし、大相撲の横綱が総合格闘技に転向したさいに、最強とは、ほど遠いパフォーマンスしか発揮できませんでした。それによって、相撲最強説を信じる人はほとんどいなくなりました。
一昔前なら相撲は最強格闘技の一角でした。相撲を題材にするなら、最強を題材にしているイメージがあったので、作品としても焦点が絞りやすくよかったのですが、今や、盛り上がりに欠けます。
そして、次に、角界最強は最近では外国人ばかりですね。朝青龍、白鳳と続いています。そして、たくさんの不祥事がありました。そのせいか、相撲人気はイマイチ。若貴時代のような熱狂はありません。そもそも相撲界が盛り上がってないのに、それを題材に漫画?という釈然としないものもあります。
読者も新連載には緊張するんだぜ
作者や、編集の人は人気が出るかどうか、非常に緊張して新連載を向かえると思います。
しかし少し違った意味ですが雑誌の読者も新連載には緊張するのです。1億分の1くらいの緊張ですが。
何をもってして緊張するのかというと、新連載が面白い場合はいいのですが、つまらない場合ですね。つまらない場合は、読者からすればカネを捨てているのと同じです。つまらない作品は読まないことが多いです。しかし、その雑誌は毎週買うわけです。毎週つまらない漫画が連載されれば、そのページ分のコストは無駄なわけです。だから、読者は面白い新連載がはじまることを望んでいて、つまらない新連載がはじまってしまわないかと多少ドキドキしているわけです。
ここで、冒頭のガッカリに戻りますが、「相撲」、、、、ガッカリ、、、。
そう僕は感じてしまったわけです。もちろん相撲が好きな読者もいるでしょうから、みんなが、みんな、そうではないと思うのですが少なくとも僕はそうでした。
そして、このガッカリは見事にひっくり返されました。
主人公の下半身がかっこいい
相撲はまわし姿でやる競技ですが、最初主人公は下だけまわしで登場します。この時の下半身がすごくカッコイイんですね。千代の富士の全盛期みたいな太ももとお尻で、まさか、それを見てカッコイイと思うなんて、新たな自分発見でした。また、そのあとぷにょぷにょ下半身でまわしをしているキャラクターが出てくるのですが、これはダサかったです。フンドシは鍛え込んでる身体があるから人様に見せられるんだとわかりました。作者の相撲への深い理解が感じられます。
主人公の言葉遣いにセンスあり
主人公は、方言を使い基本タメ口なんですが、ポイント、ポイントで美しい日本語を使います。これが、メリハリになっていてカッコイイんです。あまり今まで漫画で見たことのないアプローチです。たとえば、
”高校相撲の頂点を取りに参りました!”
この、「参りました」のところはグッと引きつけられましたね。こういうのは、意外と楽しいものです。
それ以外にも、非常に主人公の言葉が魅力がありますね。言いたくなる言葉に溢れています。
矛盾を感じる設定が、逆に、必然だったとわかる
主人公が横綱になることを目標としています。ただ、それだったら高校の相撲部なんて入らないで、そのまま、相撲部屋に入って横綱を目指せばいいじゃないですか。もう高校とか来る必要ないですよ。そもそも力士不足だって言うし。
まず、こう思うわけです。
次に主人公が小さいという設定。ハイキューもそうですが、でかい身体が必要な競技に小さい主人公という黄金パターンですね。それも無理があるしありがちだなと。そう思っていたわけです。
それに、あまり小さいと力士にはなれないという話を聞いたことがあります
舞の海さんが、身長の問題で力士になれなそうだったという話は有名だと思います。
ここで、僕が持っていた考えは
横綱になるなら部屋に入れ
小さくてルール上、力士になれないだろ
この二つです。
だからこその、高校相撲
これは、是非作品を読んでゾクッっとしてほしいので、ここでは書きませんが、上記二つの状況があるからこその高校相撲だということが、作中でわかります。要するに、主人公は高校相撲によって逆境を跳ね返そうとしているのです。その思考が非常に強いもので魅力的です。もう、なんていうか、涙出そうでした。
部室を占領するクソ不良
高校には相撲部があるものの、部室である相撲道場は不良に占領されています。作品を読んでいて感じさせられたことですが相撲道場っていうのは、非常に神聖な場所なんですね。神棚があったり。もともと相撲は神事から生まれていますから、当然といえば当然です。その道場に土足で入りタバコの吸殻を散らかす不良たち。なんか、普通の悪役不良より遥かにむかつきます。道場の占領以外は対して悪い事してないし、リーダーっぽいやつは出てきた瞬間から将来の相撲部入りを予感させるイケメンキャラです。
神聖な場所である道場を汚すってのだけが許せない部分ですが、それが非常に大きく感じるのは作者の漫画力だと思います。
主人公の男らしい魅力とスッキリ感
無駄に派手な演出などはなく、しっかりと物語を展開しただけなのに非常に面白かったです。ストーリーも捻りはない、ド直球ですね。それで、これだけ面白く胸を熱くさせてくれるのはビックリしました。
これは結構な人気連載になると思います。相撲というだけで敬遠しないで、是非、みなさんにもちゃんと読んでもらいたい作品です。
””は、集英社「火ノ丸相撲 第1話」 作者:川田から引用