【レビュー】 東京大学物語 作者:江川達也

  第6巻までは東大の受験日迄の学園ラブストーリーで、明るく清純な遥かちゃんと、秀才だが要領が悪い村上の一直線の恋愛が楽しく描かれている。特に函館山での衝撃のファーストキッスシーンと、雪だるまの中で凍死寸前まで村上を待つ、けなげな遥ちゃんの心を描いたシーンには心を打たれるはずである。

 その後真紀に翻弄され、堕落し続ける村上に失望しながらストーリーは進んでゆくが、雪山で遭難した遥ちゃんを救出しに山小屋へと向かう村上の燃え上がる愛情と奇跡の再会・・・・ここで第10巻である。実はその辺でこの物語を終了していればよかったのだと思う。

 その後ストーリーは、だらだらイライラを続けながら、なんと第34巻まで無理に話を引き延ばしていくのだ。ことに『山崎』とか『吉野』という不愉快極まりない男達の登場と、彼らに惹かれる遥ちゃんの気持には理解出来ない。そして掟破りのエンディングにはガッカリしてしまった。

  江川達也の作品はいつも前半魅力的、中盤引き延ばし、エンディングは中途半端というパターンが多いが、第34巻まで引っ張っておいてこのざまはないだろうと腹が立った。何度も上手に終わらせるタイミングがあったので非常に残念である。

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