幕末という時代の動乱期は本当に面白い。
260年続いた江戸時代が終わった幕末という時代。この時代はほんとうに面白いと思います。ぼくは大好き。
もちろん坂本龍馬も大好きですが、高杉晋作、桂小五郎、村田蔵六、吉田寅次郎、もう本当に好きな人が多いです。
幕末というのは歴史物語でも青春物語でもあるんですね。
若かりし彼らは志を持って日本中を旅していろいろな人達と出会う。仲良くなったり反目したり、利用したり利用されたり。その中で生命を失い、そして何かを成し遂げていく。
あまりに若者的で、その爽やかさや美しさが、もう本当にたまらなく好きです。
さてそんな幕末を描いた漫画にも名作が多いのですがぼくの独断と偏見でオススメ三作品挙げさせてもらいます。
風雲児たち 幕末編 作者:みなもと太郎
幕末漫画の中でこれはダントツ一番です。ぼくの中では。
シーボルトイネの物語から始まり村田蔵六が登場し、徐々に歴史上の人物たちが現れていきます。
後の吉田松陰こと吉田寅次郎もその中の一人です。この吉田寅次郎の描き方が最高ですっかりと寅次郎を好きになりました。
日本人の仕事魂や心意気にもしっかりと触れ、毎回読むたびに発見のある作品です。
しかもギャグ漫画なのです。歴史xギャグ。とにかく丁寧に描くが故に展開が遅いのが難点ですが、
もっともっと丁寧に画いてほしいという気持ちもあります。細かいエピソードの積み重ねが歴史の理解を助けるからです。
とにかくすごい作品です。
おーい!竜馬 原作:武田鉄矢、作画:小山ゆう
タイトルから分かるように竜馬が主役の漫画で、多少の演出は有るものの史実にかなり忠実に描かれた作品です。
歴史物というよりも青春活劇物です。竜馬の物語を描く際に難しいと思うのは彼が歴史上で大活躍する薩長同盟と大政奉還が、政治工作なのでどうしても地味になる事です。西郷や木戸、後藤を説得して回るという仕事です。
例えば高杉晋作のように革命戦争の指揮をとるというような華やかさがないのです。だから竜馬を主役にして最後までしっかりと描ききるのは
本当に難しいと思うのですが、この作品は最後までしっかりとやってくれました。
だから『おーい!竜馬』を開けば竜馬が最後までどういう活躍をしたのかいつでも見ることが出来ます。
陸奥圓明流外伝 修羅の刻 風雲幕末編 作者:川原正敏
この作品は月刊マガジンに掲載されたものですし知っている人はかなり多いのではないかと思います。
ここまで紹介した2作品に比べると歴史物としてよりエンターテイメント物で、『JIN』や『龍狼伝』なんかに近い性質の作品です。
架空の人物である主人公陸奥出海を軸に坂本龍馬、土方歳三、沖田総司らが活躍する物語です。
主人公は架空であっても、それ以外の部分は非常に史実に忠実で、むしろ陸奥出海の存在により歴史上の疑問が腑に落ちるようなストーリー展開は素晴らしいなと思いました。
例としては、暗殺者に狙われる坂本龍馬が何故あれほど自由に薩長同盟や大政奉還という大事業を成せたかという疑問に対して、最強の格闘家である陸奥出海が常に龍馬の傍らにいたからという理由があります。出海という雲に乗って龍馬は大事業を成したという話です。
確かに龍馬は命を狙われる様になってからも相当に人に合わなければいけなかったはずなのでそこへの理由付けとして完成度が高いです。
本物の人間である以上、死に際が必ずしもドラマチックではないのですが、陸奥出海の存在で土方歳三、沖田総司の死は非常に華やかになります。
これは作者である川原氏が彼らに捧げた鎮魂歌なのかもしれません。
ぼくがこの本を手にした年齢は小学生から中学生にかけてくらいの時期なのですが、今まで何度開いたかわかりません。
司馬遼太郎の影響
上記三作品には司馬遼太郎氏の影響を非常に強く感じますね。
同じ題材を例に取る以上避けられないのかも知れません。
『風雲児たち 幕末編』には、『花神』『世に棲む日日』の影響が強く感じられますし、『おーい!竜馬』は『竜馬がいく』の影響が。
竜馬のりゅうの字を「竜」で表記する事自体が司馬氏の影響だと思います。
司馬遼太郎氏が以前龍馬のりゅうの字を「竜」にしたのは小説として龍馬を自由に書くためにやったと言っていたのを読んだ記憶があります。
『おーい!竜馬』のあとがきで作者も『竜馬がいく』という作品との兼ね合いを気にするコメントをしていました。
『陸奥圓明流外伝 修羅の刻 風雲幕末編』は、そういう意味でもっとも自由だったかもしれません。
定説的である幕末世界を作りそこに架空の主人公を投じる事により無理のない面白さを作り出しました。
もし幕末好きであればこの3作品以外にも司馬遼太郎氏の『花神』『世に棲む日日』『おーい!竜馬』『燃えよ!剣』はオススメです。
多様な作品に触れれば触れるほど時代を立体的に感じる事が出来るようになり、より楽しむ事が出来ます。