アルマトラン編の面白さ凄まじい
マギの長い連載の中でも個人的にアルマトラン編は相当に面白く感じる。まず表現が面白い。人間が捕食されていた時代を描いたシーンがあったが、その捕食者である生き物の見た目がまず素晴らしかった。彼ら(知的生命体なので敬意を表して彼らと表現する)は、ジャミラ的な体の形に縦に裂けた口。とても知能がありそうには見えないがアリを取る猿くらいの知能はあるのかベタベタ張り付く棒で人間を捉えては捕食していた。捕らえた人間を調理したような話もあったので、やはり猿とは比較にならない知能があるのかも。
鱗狼のバカ顔のパンチ力
鱗狼がシバの魔法によって「バカ」にされてしまった顔はかなり悲劇的だった。薬物中毒の末期のような表情は胸に迫るものがあった。無理やり薬漬けにされた労働者の悲惨さだ。ソロモンたちがシバを塔から開放する事により鱗狼も呪縛から開放された。
子供の鱗狼までも
しかし前回でシバが仲良くなった子供の鱗狼までもが別の魔導師により「バカ」にされてしまう。この時の子供の鱗狼モモの表情はあまりに凄まじい。眼の焦点は合わず涙を流しながらヨダレを垂らしてる。子供を薬漬けにして労働させているような描写だ。実際にこの世界では鱗狼は知的生命体であるから人間と変わらない。基本的人権を持つべき生命なのだから多少見た目が人間と異なってもその悲惨さは変わらない。その痛々しさをビジュアルでストレートに突っ込んでくるあたり、マギの今までの連載の中でも、そうとう刺々しい表現と感じる。
紐解かれる謎
もちろんビジュアル的な話以外にも面白さがある。ウーゴくんを始めとしたマギの根幹に迫る秘密が少しづつ解読されていることである。72の塔、72の神杖、72の眷属がつながった時には震えるような衝撃があった。
魅力的なソロモンと仲間たち、そしてシバ
そして最も重要なのはこれだろう。ソロモンとシバ、そして眷属たちのキャラクターが非常に魅力的なのだ。中でもソロモンの魅力はずば抜けていて、シバを化け物扱いしたり、カリスマ性で仲間を従えたり、ビジュアルの話に戻るが彼の外観も非常に魅力的に描かれている。
今回のタイトルは「ソロモンの正体」
タイトル通りソロモンの正体が少し明らかになる。読者にとっては想像の範囲内だったかもしれない。明らかになったソロモンの性はアブラハムだった。アブラハムとは「アブラハムと7人の子」で有名なアブラハムだ。歴史上のソロモン王もアブラハムの子孫とされている。性が同じという事で実際のソロモン王とマギ世界のソロモンが同じ道を歩むことを暗示的に提示しているのかもしれない。だとするなら未来のソロモンの運命が見えてくるかもしれない。
エチオピアの女王シバ
ソロモン王の時代に現れた歴史上の人物の固有名詞が次々に登場している事を考えると、この時代がモチーフになっているのは間違いないだろう。例えばシバは同時代に存在したエチオピアの女王シバから取られた名前だろう。
実際のソロモン王はどうか?
ソロモン王が生きている間、王国は統治されていた。とはいえ内部では格差が広がり国家が分裂する可能性が大きく育っていた。彼の死後国家は分裂する。この辺りの歴史がマギのソロモンに影響を及ぼしそうだ。例えばソロモンが王に即位し世界を治める。その中で魔導師と魔導師以外の格差が激しくなる。魔導師が迫害されるという方向になり、迫害された者達がソロモンを追い詰めるような物語になるかもしれない。マグノシュタットが成り立ったストーリーと似ているのでもう少しひねりが必要かと思うが。
マギ 第220話 予想
ソロモンの過去が更に語られるだろうと予想する。何故彼が反乱軍を組織したのか、塔を開放するのか、思想の源泉を紹介するような話になると思う。
-週刊少年サンデー 2014年17号 マギ 作者:大高忍-