衝撃!最終回で、起承転結の起を描いた。 【レビュー】 惡の華 最終回

賛否両論ありそうな最終回

普通、物語の最終回は、起承転結の結の部分なので、物語として終わらせる必要があります。一番一般的なのはハッピーエンドで、ある程度長期的に連載した作品は、まず間違いなくハッピーエンドになりますね。ただ、物語的に破綻しなければ悲劇的な終わり方でもいいわけです。しかし今回の惡の華では、分かりやすい結が描かれませんでした。言うなればTV版エヴァンゲリオンの最終話のような。

中村さんから見た物語のはじまり

なんと最終回で、起承転結の起を描いてしまいました。この作品の初期、中村さんは非常に謎な女の子なんですね。ぼくは意識していなかったのですが、考えてみれば、この作品最大の謎は、何故、中村さんはああだったのか?ということです。それを最終話で作者は描いてくれました。

一方、春日の物語は先月で終わっていた感じがします。中村さんが、これからどうなるのか、彼女はどういった一生を過ごすのか。そういった部分が前回まででも描かれていなかったんですね。そこは、最終回でも描かれませんでした。それは放り出した感じです。じゃあ、物語が終わった感がないか?そう言われれば、そんなことはなくちゃんと完結したんですね。これは不思議でした。

この物語の本筋は中村さんへの興味だった

推理小説だったら、犯人がわかれば、そのあと登場人物がどうなったのか、わからなくても、終わった感じはしますよね。この作品での犯人の役割は、中村さんの心がどうなっているのか?ということだったのです。少なくともぼくにとってはそうだったようです。一読者として、夏祭りが終わったあとに急激に、この作品の魅力が減ったような気がしました。それはどう考えても中村さんが登場しなくなったからです。で、何故、それほど中村さんに惹かれていたのかと言えば、結局、彼女の心への興味だったのです。

そういう読者も気づいてなかった気持ちを引きずり出して完結

あの時、中村さんはどうして春日に声をかけたんだろう?

彼女にはどんな世界が見えていたんだろう?

この問いは、ぼくのなかでは顕在化されていませんでした。ただ無意識のなかでは渦巻いていたようで、その答えを最終話で貰って、スッキリしました。そして、これを読んで、中村さんの平穏な未来を少し想像出来ました。学生のころ、こういうグチャグチャした感覚っていうのは誰でも少なからずあるもので、年をとると意外と落ち着いてきます。落ち着いて来た中村さんは、もう描かれていたので、なんとなく未来が想像出来ました。起点がここで、今彼女がその状態なら大丈夫そうだなっていう感じです。すごい、いいラストだったと思いますね。これで良かったです。