多様な人間をしっかりと描く凄さ。 【レビュー】 進撃の巨人 第57話

調査兵団の不屈の魂

今回は、ハンジとフレーゲルの会話がすごかったです。この作品は表面上は巨人との凄惨な戦いがメインに見えますが、よくよく読むと、やはり人間劇なんですね。人間が、いろいろな感情で、哲学で、行動していくさまが、生々しく描かれます。

ハンジとフレーゲルの会話は特にすごかったです。ハンジの死生観とフレーゲルのような、一般人の死生観が激しくぶつかります。これは、すごいことだと思いました。作者は一人です。こういった作品。人がガンガン死んでいく作品を描いていたら、事を成すには命も問わないみたいなやつばかりが出てきます。そんななかでいきなり、ノーマルなヤツをだすわけです。こんなに尖った世界観なのにキャラクターの内面に多様性があるんです。思想や価値観が違う人物が世の中にはたくさん存在しているのが現実です。そういった現実感が今回は非常に強く表現されました。こうやって、物語を生々しくした上で巨人を登場させるから、リアリティが生まれ恐ろしさが出ます。

勝ったことがない調査兵団

また、今回の彼らの話しのなかで、気付かされた部分がありました。実は調査兵団という組織は勝利を知らないんですね。壁の外に出ても、団員をたくさん失って帰ってくるだけです。そんなに負け続けているのに、気持ちが折れないで、調査を続けている組織です。いつか勝つために負け続けている組織が調査兵団です。そこには、彼らの不屈の魂があります。どれほど、負けても壁に囲まれて奴隷として生きることは受け入れない。そういった強い意志は、この作品のテーマでもあるんでしょうね。人間の不屈の魂。カッコ良かったです。