『暗殺教室』に学ぶ、教育・子育て論!
現役塾講師の視点で解説します(全5回)
第3回は“呪いの時間”“竹林の時間”“支配者の時間・2時間目”(単行本第9巻収録)からです。話のメインの人物は“竹林考太郎”です。
2学期になり、竹林がE組を離れた。話を聞くと、仮に暗殺が成功して、賞金の分け前を得たとしても、医者一家の中では認められない。「出来て当たり前」の家に生まれた竹林にとっては、地球の終わりよりも億というお金よりも、家族に認められる方が大事だというのです。「頑張ったじゃないか」のひと言をもらうためだけに死ぬ気で勉強した、と―。
ここでは、なぜ竹林が、ここまで親に認められることに熱心だったのかを考察します。
「認められたい」という欲求はごく自然なことです。欲求に関して、心理学者のアブラハム・マズローが、欲求のプロセスを「欲求5段階説」として説明しています。欲求の段階は、
1.生理的欲求(食事・睡眠・排泄)
2.安全欲求(住居・収入・緊急時のホットライン)
3.愛の欲求(受け入れられている)
4.承認欲求(他人からの賞賛)
5.自己実現欲求(学問追求・自己目標の実現)
に分けられるという考えです。
竹林はこの中の「承認欲求」の段階といえます。しかし、親が竹林を「勉強が出来るか」でしか見ていないため、血を吐く思いで勉強するしかなかったのです。
上述の5段階欲求は、1から2、2から3という風に、求めるものが順にステップアップしていきます。よって、自己実現欲求の段階に至るには、承認欲求が満たされる必要があります。つまり、他人から認められて初めて、自分のために自分を磨くようになります。認められている感覚がないと、いつまで経っても自己研鑽に向かわないのです。
漫画内では、E組の仲間や殺せんせーが、竹林を認めたので、最後には気持ちよくE組に戻ってきました。しかし、本来ならば一番一緒にいる時間が多い親が「認める場所」を作るべきです。
認める方法は簡単です。それは、子どもをある側面だけで捉えないで見ることです。親子とはいえそれぞれ違う人間です。親の価値観で子どものやることを縛らず、様々なことを体験させましょう。その中で子どもが熱中する姿を見つけ、認めることです。
何かと比較される世の中です。せめて家庭内では子どもを評価することから始めましょう。
次回は“潮田渚・広海親子”です。
(そのかわ ゆうじ)